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森林の生物多様性と生態系サービスの伝達:科学から政策へ

 2011年12月5日掲載

論文名 Forest Biodiversity and the Delivery of Ecosystem Goods and Services: Translating Science into Policy.(森林の生物多様性と生態系サービスの伝達:科学を政策に生かす)
著者(所属)

イアン・トンプソン(カナダ森林局)、岡部 貴美子(森林総研 森林昆虫研究領域)、ジェイソン・ティリアナキス(カンタベリー大学)、プシュパム・クーマー(元リバプール大学・現国連環境計画)、エキハート・ブロッカホフ(ニュージーランド森林研究所)、ナンシー・シェルホーン(オーストラリア連邦産業科学研究機構)、ジョン・パロッタ(アメリカ農務省森林局)、ロベール・ナシ(国際森林研究センター)

掲載誌

BioScience 61:972-981 (2011年12月発行)

内容紹介

生物多様性が人間に与えてくれる価値を生態系サービスといい、生物多様性を保全する上での大きな意義と認識されるようになりましたが、社会的に十分に認知されてはいません。そこで、森林総合研究所をはじめとした国際的な研究グループが、森林の生物多様性と生態系サービスについて、これまでの知見と問題点、今後の展望をまとめた論文を発表しました。木材や林産物、炭素吸収や土や水の供給、森林の生物による花粉媒介や天敵の提供など様々な恩恵を人間社会に与えてくれる森林生態系は、生物多様性によって成立し維持されていることから、生物多様性は生態系の基盤といえます。しかし政策決定の場では、環境保全政策以外では生物多様性の重要性が理解されているとはいえません。また森林管理者は特定の生態系サービスを重視しがちで、生態系サービスの利用状態はバランスを欠いています。これらのことを解決し持続可能な森林管理を行うために、本論文は、森林管理者や行政担当者が何を求めているかを、研究者が理解し、答えるために 1)生物多様性が生態系サービスを提供するメカニズムの明示、 2)生態系サービス評価手法の高度化、 3)生物多様性指標開発などに取り組むことの重要性を指摘しています。これによって、生態系サービスの各機能をバランス良く発揮するような森林管理に活かしていく道筋を示すことが可能になりました。なお、本研究グループは、2010年4月に森林総合研究所と早稲田大学環境総合研究センターの共催で行った生物多様性条約COP10記念シンポジウムの講演者によるものです。

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