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温暖化が進行すると森林土壌の炭素ストックが将来減少する?

2012年5月18日掲載

論文名 Potential carbon stock in Japanese forest soils — simulated impact of forest management and climate change using the CENTURY model(日本の森林土壌の炭素蓄積量予測—森林管理と気候変動のCENTURYモデルを用いた影響評価)
著者(所属)

橋本 昌司・鵜川 信(立地環境研究領域)、森貞 和仁(北海道支所)、 Martin Wattenbach(ヘルムホルツセンターポツダム)、 Pete Smith(アバディーン大学)、松浦 陽次郎(国際連携推進拠点)

掲載誌

Soil Use and Management、28巻(2012年)、DOI: 10.1111/j.1475-2743.2011.00372.x(外部サイトへリンク)

内容紹介

樹木(枝葉・幹・根)にはたくさんの炭素が蓄積していますが、森林土壌にはその2倍以上もの炭素が蓄積しており、樹木と同様に重要な炭素ストックです。土壌炭素の蓄積は様々な要因に影響を受けますが、森林管理の方法や気候変動の影響を強く受ける事がわかっています。本研究では、様々な森林管理手法(伐採周期と間伐の有無)や現在予想されている気候変動シナリオ(100年後に約3℃の気温上昇と約9%の降水量増加)が土壌炭素ストックに与える影響を、森林物質循環モデルを用いて全国評価しました。その結果、現在の気候では日本の森林土壌にはおよそ1600から1830 Tg (テラグラム=100万トン)の炭素が蓄積可能であることがわかりました。また、長い伐採周期の方が土壌炭素ストックが大きくなることがわかりました。しかし、気候変動シナリオを使って予測すると、気温の上昇と降水量の増加のために植物の成長は増加するものの、植物に固定される炭素蓄積を上回る勢いで土壌炭素が分解され、森林土壌の炭素ストックが現在よりも5 %程度減少することが示唆されました。今後も森林における炭素ストックをしっかり監視していく必要性を示唆するとともに、地球温暖化対策をしっかり行うことが必要です。

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