研究紹介 > 研究成果 > 研究最前線 2012年紹介分 > 希少種ケショウヤナギの保全 ―遺伝子流動が可能となる集団間の配置が必要―
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2012年5月28日掲載
論文名 | Effects of pollen availability on pollen immigration and pollen donor diversity in riparian deciduous trees (Salix arbutifolia) |
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著者(所属) |
星川 健史(名古屋大学)、永光 輝義(森林総研 森林遺伝研究領域)、戸丸 信弘(名古屋大学) |
掲載誌 |
Botany 掲載予定(巻号未定) |
内容紹介 |
希少種を絶滅させることなく保全するためには、孤立した集団の遺伝的多様性がどの程度に保たれているか調べることが重要です。近年では、マイクロサテライトマーカーと呼ばれるDNAを用いて、集団の遺伝的多様性や生産された種子の花粉親の同定などができるようになってきました。 北海道の帯広川の分断された河畔林で、雌雄異株の絶滅危惧種ケショウヤナギの全ての雄性個体(194本)と雌性個体(161本)の遺伝子型を調べました。さらに、周囲の雄性個体の数が異なる雌性個体(8個体)の種子について花粉親を特定しました。その結果、周りの雄性個体の数が減ると同じ河川の花粉親数は8から1まで減少し、両親が同じ種子が92%に達しました。そのため、河川内の交配だけでは次世代で近親交配が起こり、遺伝的多様性が低下すると考えられます。一方、8%から50%の種子が4 km以上離れた別の河川から飛んできた花粉によって交配し、この遺伝子の移入が遺伝的多様性の低下を防いでいました。集団が遺伝的に孤立しないようにするには、ケショウヤナギの場合は集団間の距離が4 km以内にあることが好ましいと言えます。 |
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