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熱帯林を支える地中の巨大な貯水タンク

2013年4月1日掲載

論文名 Soil physicochemical properties and moisture dynamics of a large soil profile in a tropical monsoon forest (熱帯モンスーン林における大型土壌観察断面を用いた土壌理化学性と水分動態の評価)
著者(所属)

鳥山 淳平(温暖化対応推進拠点)、大貫 靖浩(立地環境研究領域)、太田 誠一(京都大学)、小杉 賢一朗(京都大学・JST)、壁谷 直記(九州支所)、延廣 竜彦(水土保全研究領域)、清水 晃(九州支所)、玉井 幸治(水土保全研究領域)、荒木 誠(温暖化対応推進拠点)、ケスサムコール・チャンソファル(カンボジア森林局)

掲載誌 Geoderma、印刷中、Elsevier、DOI: 10.1016/j.geoderma.2013.01.015(外部サイトへリンク)
内容紹介

東南アジア大陸部のメコン河は、流域に住む5000万人の人々に水を供給しています。この水資源の安定した供給を支えているのが、流域に広く分布する熱帯季節林の水資源涵養機能です。この機能を評価するために、これまであまり知られていない土壌深くの水動態を明らかにしました。

カンボジアの熱帯季節林には、乾季の間も落葉せず、蒸散を続ける森林(乾燥常緑林)が分布しています。この乾燥常緑林を支えているのは地下深部の土壌水分ではないかと予想されました。そこで私たちは、土壌を深さ10mまで掘って、大型の土壌断面を作成し、地下深部の土壌水分の変化を通年観測しました。その結果、乾燥常緑林の根は深さ8mにもおよんでおり、雨季に土壌に貯められた1200mmを超える水分のストックを乾季にも利用していることがわかりました。このような巨大な水の貯蔵タンクができる理由は、カンボジアの高温多湿な気候によって岩石は深くまで風化がすすみ土層が深くまで形成されていることと、そこに周囲から水が集まり大量の水が貯蔵されるからです。この森林の地下部の巨大な水タンクの解明は、メコン河流域の水資源量の把握や森林の水循環の将来予測に利用され、熱帯季節林の保全や流域の水資源管理に貢献します。

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