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26年間の長期観測で分かった木曽ヒノキ天然更新の可能性

2013年8月23日掲載

論文名 赤沢施業実験林における単木抜き伐り26年後のヒノキの更新状況
著者(所属)

杉田 久志(森林植生研究領域)、九島 宏道(多摩森林科学園)、楯 直顕(木曽森林管理署)、酒井 武・齋藤 智之(森林植生研究領域)、三村 晴彦(木曽森林管理署南木曽支所)、森澤  猛(企画部地域林業室)

掲載誌 中部森林研究、61号、中部森林学会、2013年3月
内容紹介

長野県木曽地方の天然生ヒノキ林から産出される材は木曽ヒノキとして高く評価されていますが、ヒノキ美林を後世に残すための天然更新技術の開発は、更新成功の検証に時間がかかるため、十分に進んでいません。そこで、木曽地方上松町の赤沢施業実験林で1985年に行われた高齢ヒノキ林での上木の択伐試験の26年間にわたる追跡結果を解析し、天然更新施業の成功条件を明らかにしました。

択伐試験後26年目のヒノキの更新木(実生・稚樹を含む)の総本数は、平均で68万本/haと非常に高密度であり、そのうち高さ0.5m以上のものが14,000本/ha、1.3m以上が2,300本/ha、2m以上が800本/haでした。年輪の解析から、樹高2m以上の更新木は択伐前から存在していた稚樹が成長したものでしたが、それ以下のものは伐採後に芽生えたものであり、択伐の効果で更新が順調に進んだことが判明しました。詳しく調べると、ヒノキ実生の本数は、択伐後に豊作年を迎える毎に増加して伐採約10年後にピークを迎え、現在は成長に伴い緩やかに減少しつつも依然高い密度を維持していました。

以上のように、ササのない木曽ヒノキ林分では、下層のアスナロすべてとヒノキの択伐(本数で42%、材積で28%)と低木の刈り払いによって、稚樹の発生と成長が促され、更新が順調にすすむことが分かりました。今後は、更新木が上木と置き代わり世代交替が完了するまで、時間をかけて施業の検証と観測を行う必要があります。

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