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プラスチックのクリスマスツリーで解明した森林からの水の蒸発

2013年12月24日掲載

論文名

Experimental study on canopy interception using artificial Christmas trees to evaluate evaporation during rainfall and the effects of tree height and thinning.(降雨中蒸発及び樹高と間伐の影響を評価するためのプラスチック製クリスマスツリーを用いた樹冠遮断実験)

著者(所属)

村上 茂樹(気象環境研究領域)、鳥羽 妙(尚絅学院大学)

掲載誌

Hydrological Research Letters, Vol. 7, No. 4, 91-96, November 21, 2013、 DOI:10.3178/hrl.7.91(外部サイトへリンク)

内容紹介

森林から水分が蒸発する現象は、水源涵養機能、洪水防止機能や気候変動などと関わる重要な現象です。降雨の最中には樹木の葉の気孔が閉じているにもかかわらず、森林から水分が蒸発することが知られていますが、実はその詳しいメカニズムは謎に包まれたままです。

通常、降雨中の森林からの蒸発量は約1時間毎にしか測定できず、詳細な変化を捉えることができませんが、本物の樹木の代わりにプラスチックのクリスマスツリーを用いると、5分ごとに精度よく測定でき、蒸発の詳細が分かりそうです。そこで、今回、高さ65cm~240cmの市販のプラスチック製クリスマスツリーを屋外に多数並べて、降雨の際の蒸発量を詳しく測定しました。その結果、実際の森林と同様にプラスチックのツリーからも降雨中に蒸発していることが分かりました。その蒸発量は降雨の約2割に相当し、実際の森林で観測される値とほぼ同じ割合でした。さらに、雨が降っているときには盛んに蒸発しているのに、一旦雨が止むと、ほとんど蒸発していないことも初めて確認できました。降雨時における森林からの蒸発は、気孔からの蒸散のような生物的な現象ではなく物理的なメカニズムで起きていると考えられます。

雨の最中に森林から大量の水が蒸発するという不思議な現象の一端がプラスチック製クリスマスツリーを使って解明されました。

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