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林内路網を水から守る! 新しい路面排水手法

2014年5月14日掲載

論文名

The effectiveness and features of the rolling-grade drainage method in spur  roads 森林作業道における波状縦断勾配による排水の有効性と特徴

著者(所属)

宗岡 寛子(林業工学研究領域)、白鳥 亮介(東京大学大学院)、臼田 寿生・古川 邦明(岐阜県森林研究所)、櫻井 倫・酒井 秀夫(東京大学大学院)

掲載誌

森林利用学会誌、29巻1号、森林利用学会、2014年1月

内容紹介

雨の多いわが国では、路面から雨水を速やかに排除して侵食などの被害を防ぐことが非常に重要ですが、限られたコストの中でこれを実現する必要があります。その対策の一つに、波のように登り下りを繰り返す道に設計することで、雨水を波の底にあたる部分(凹部)に導いて林地に排水する方法があります(波状縦断勾配)。この方法はコストのかかる排水構造物を減らせると期待できることから、森林作業道の計画時に採用を検討するよう林野庁から指針*が出ています。しかし、この方法の有効性について科学的データは乏しく、作業道の設計に必要な長所・短所は明らかにされていませんでした。

そこでこの研究では、波状縦断勾配をもつ道で排水を観測し、凹部の排水機能を定量的に実証しました。また、道路を横切る水路のような排水構造物で排水する場合に比べ、水が薄く広がって林地斜面に流れ落ちるという特徴を捉えました。これは、排水先となる林地斜面の侵食を引き起こしにくいというメリットをもたらす反面、水が広がることで流速が落ち、路面の上に留まってしまい易いというデメリットももたらします。さらに、このような特徴は凹部の形状によっても程度が異なり、平坦に近い凹部では分散してゆっくりと排水され、V字型に近い凹部の場合はそれよりは集中的に速く排水されることが分かりました。これは、道を設計する際に、排水先となる林地斜面が侵食されやすい場合は分散してゆっくり排水する前者の形状とし、水を含むとぬかるんでしまうような道では、路面から速やかに排水される後者の形状とした方が良いことを示します。

このように本研究により、波状縦断勾配による排水の長所と短所が示され、計画時に現場の条件に応じて森林作業道の凹部をどのような形状にするべきかを判断する上で非常に有用な情報が得られました。

 * 森林作業道作設指針の制定について(外部サイトへリンク)(平成22年11月17日)。

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