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現状のままではいっそう進むカンボジアの森林減少

2015年9月9日掲載

論文名

Forecasting forest areas and carbon stocks in Cambodia based on socio-economic factors (社会経済要因にもとづくカンボジアの森林面積と森林炭素蓄積の将来の見通し)

著者(所属)

道中 哲也(林業経営・政策研究領域)、松本 光朗(COD)、宮本 基杖(企画部)、横田 康裕(九州支所)、ソク ヘン・ラオ セサパル(カンボジア森林局)、塚田 直子(温暖化対応推進拠点、現在林野庁)、松浦 俊也(森林管理研究領域)、マ ブティ(カンボジア森林局)

掲載誌

International Forestry Review、17(1):66-75、英連邦林学会(Commonwealth Forestry Association)、2015年3月, DOI: 10.1505/146554815814725103(外部サイトへリンク)

内容紹介

気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の最新版報告書では、農業、林業、土地利用による温室効果ガスの排出は、人間活動に由来する総排出量の24%を占めることが示されています。その中で、開発途上国での森林の減少・劣化による排出量を削減するための仕組みとして、REDDプラスが衆目を集めています。REDDプラスでは、途上国が森林保全を通じて達成する排出削減量を計算するために、現状のままで推移した場合に森林からの排出量がどうなるのかを示す「参照レベル」(基準)の算定が必要です。

私たちは、森林の減少・劣化が進行するカンボジアで、「参照レベル」の算定に必要となる森林面積と森林炭素蓄積の推定を試みました。もとにしたのは、2002年から2010年までのカンボジア各州の森林面積と森林炭素蓄積データ、そして森林減少の要因である人口、農業総生産額、大規模林地転用のデータです。カンボジア各州の横断的データと時系列データをまとめて扱うパネル分析手法を適用して、2011年から2018年までの森林面積と森林炭素蓄積変化を予測しました。

その結果、現状のままでは、カンボジア全国の森林面積は、2010年の1,036万haから2018年には951万haに減少、同様に森林の炭素蓄積量は12.8億トンから11.7億トンまで減少することが予測されました。この予想は、カンボジアが世界的にも最も急激な森林減少国の一つになりうることを示しています。

この成果は、カンボジアやその他の国のREDDプラスのための「参照レベル」の算定に大きく貢献するとともに、カンボジアの政策策定にも資することが期待されています。

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