研究紹介 > 研究成果 > 研究最前線 2015年紹介分 > 北方針広混交林における択伐施業の成功の秘訣は更新木の確保にあった
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2015年12月24日掲載
論文名 |
北海道中部の北方針広混交林における択伐施業による林分構造と成長の57年間の変化 |
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著者(所属) |
石橋 聰(北海道支所) |
掲載誌 |
森林計画学会誌、48巻2号、75-91、森林計画学会、2015年3月 |
内容紹介 |
エゾマツ、トドマツ、ミズナラなどで構成される、北海道の針広混交林では、1本ずつまたは複数の木を群状に伐採して、稚樹の天然更新を促す“択伐施業”が行われてきました。この施業方法は森林を皆伐しないので、気象害などに強く、生物多様性保全など多面的機能の維持にも効果を発揮します。しかし、現在、こうした択伐林の資源量が減少して、収穫できる木材も僅かとなっており、本来めざしていた適切な択伐施業が実施されていなかった可能性があります。そこで、57年間にわたる調査から択伐施業林3箇所の現状を分析して、択伐施業を成功させるための秘訣を明らかにしました。 調査した択伐林では、択伐施業の条件とされる適切な選木注)がなされ、伐採量も成長量以下に抑えられ、立木の形質が向上するとともに林分成長量が増加しており、林木の成長という点では成功しているといえます。その一方で、次世代の収穫木として育つべき小径木が顕著に減少しており、将来、期待通りの収穫ができなくなる恐れがあります。これは、地表に密生するクマイザサが稚樹の生存や成長を阻害し、天然更新が進んでいないことと、伐倒集材作業の際に更新木が損傷を受けることが大きな要因でした。 今後、択伐施業を成功させるためには、更新木の確保が重要であり、そのためには、施業コストを考慮しつつ、植栽などによって更新木を補ったり、小形の機械を使用して損傷木をできるだけ減らす伐倒集材を行うなどの工夫が必要です。
注)適切な選木:択伐においては成長が衰退したり形質が不良の立木を優先に選木します。 |
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