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2016年7月15日掲載
論文名 |
Reducing damage caused by oak wilt disease transmitted by the ambrosia beetle Platypus quercivorus (Coleoptera: Platypodidae) using oak log pile traps. (カシノナガキクイムシ(Platypus quercivorus (Coleoptera: Platypodidae))によって伝染するナラ枯れ被害に対するナラ類丸太の野積みによる防除戦略) |
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著者(所属) |
斉藤 正一(山形県森林研究研修センター)、近藤 洋史(九州支所)、高橋 文(山形県森林研究研修センター)、岡田 充弘(長野県林業総合センター(現長野県木曽地方事務所))、箕口 秀夫(新潟大学) |
掲載誌 |
Applied Entomology and Zoology, 51(2):264-274, Springer, May 2016、DOI: 10.1007/s13355-016-0398-3(外部サイトへリンク) |
内容紹介 |
ナラ類やシイ・カシ類(以下、ナラ)の樹木の大量枯死のことをナラ枯れとよんでいます。ナラ枯れは、日本国内の広葉樹資源に甚大な被害を与えるため、その対策が急がれています。そこで、野積みしたナラ丸太をトラップ(罠)として利用して、ナラ枯れを伝染させるカシノナガキクイムシ(Platypus quercivorus)を大量に捕獲する、ナラ枯れ防除手法を開発しました。市町村ほどの広大な面積(2万883ha)に対して、2009年から2014年の6年間で、野積み丸太トラップ1基当たり20m3以上の材積のものを15箇所に延べ42基設置しました。その結果、ナラ枯れによる枯損木数を比較すると、トラップを設置した地区と設置しなかった地区とでは明らかな差があり、概算で2万6,500本のナラ立木をナラ枯れによる枯損から救うことができたと考えられました。トラップに使った野積みした丸太はチップにすることで、ナラ枯れを伝染させるカシノナガキクイムシは殺虫されます。しかも、そのチップは燃料用や製紙用として利用できます。また丸太トラップを作成するために伐採した森林では、萌芽により更新します。このようなことから、今回開発したトラップは「害虫の駆除」、「木材資源の循環利用」、「森林の更新」という三位一体の防除法といえます。
(写真:野積みしたナラ丸太によるトラップ)
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