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2017年4月5日掲載
論文名 |
Context-dependent changes in the functional composition of tree communities along successional gradients after land-use change(二次遷移に伴う樹木群集の形質構造変化)) |
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著者(所属) |
饗庭 正寛(東北大学)、黒川 紘子(森林植生研究領域)、小野田 雄介(京都大学)、小黒 芳生・中静 透(東北大学)、正木 隆(森林植生研究領域) |
掲載誌 |
Journal of Ecology、104(5):1347-1356、September 2016、DOI:10.1111/1365-2745.12597(外部サイトへリンク) |
内容紹介 |
林野庁は1999年から全国約14,000個所で森林資源の現況を調べる森林生態系多様性基礎調査を実施しています。この内、2,574個所から、伐採後の経過時間、生育する樹木の種や太さのデータを得ました。また、主な構成種約200種について、成木の最大の高さ、葉の大きさ、葉の単位面積あたりの重さ、材の比重、種子の重さの値を収集し、上記の森林データとあわせて解析しました。その結果、伐採後の経過時間にかかわらず、樹木の量(胸高断面積合計)が少ない森林では、成木の最大高があまり大きくならない樹種、葉の大きな樹種、葉の単位面積あたりの重さが低い樹種、材の比重が小さい樹種、種子の軽い樹種が優占する傾向が全国的に見られました。これは、伐採後の空き地に侵入して速やかに成長する、いわゆるパイオニア種が増えたことによります。このような伐採による森林の性質変化は、炭素を蓄えるはたらきを含め、森林の機能を低下させる可能性があります。 一方、高木層を形成する種の侵入に伴う森林の性質変化は森林の機能の回復につながりますが、その変化にどの程度の期間が必要かなどは、森林の種類によって異なりました。森林を伐採した後の生態系の変化を予測することは容易ではありませんが、全国規模の森林モニタリングを今後も継続していくことは、そうした予測を含めて、我が国の森林の適切な管理に欠かせないものです。
図:林齢と胸高断面積合計の変化に伴う林内の樹木の性質の変化(暖帯林の場合) 各図とも暖色は値が大きいことを示します。胸高断面積合計が小さい森林(黒枠)では、成木の最大の高さが低く、種子が軽く、材の比重が小さい樹種が増える傾向にあります。 |
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