研究紹介 > 研究成果 > 研究成果 2017年紹介分 > 宮崎県の照葉樹林で樹木が枯死する最大の要因は台風だった
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2017年7月3日掲載
論文名 |
宮崎県綾町の照葉樹林群落の動態と影響する様々な環境要因との関係 |
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著者(所属) |
齊藤 哲(植物生態研究領域)、永淵 修・中澤 暦(福岡工業大学)、金谷 整一(九州支所)、新山 馨(森林植生研究領域) |
掲載誌 |
環境科学会誌、30巻3号、190-202、環境科学会、2017年5月、 DOI: 10.11353/sesj.30.190(外部サイトへリンク) |
内容紹介 |
近年、大気汚染物質による森林への影響が各地で報告されており、大陸に近い九州の照葉樹林においても越境汚染物質などによる大気汚染の影響が懸念されています。しかし、照葉樹林では、大気汚染の影響以外にも、台風による風倒やシカによる剥皮など様々な要因で樹木は枯死し、現在の森林の状態を観察するだけでは樹木が枯死した原因を判断するのは困難です。 そこで、私たちは20年以上の観測データと環境データをもとに照葉樹林で樹木が枯死する原因を調べました。その結果、様々な環境要因のうち、樹木の枯死に大きく影響しているのは台風と判定されました。観測期間中、最も多くの樹木が枯死したのは1993年の非常に強い台風13号が九州に上陸したときで、台風直後は生きていても、枝の損傷などの被害を受けた樹木は、その約半数が2013年までに枯れていました。一方、大気汚染物質のひとつであるオゾンは、実際に林冠の枝葉に蓄積されていることが確認されましたが、オゾン濃度の増加が枯死や成長の低下をもたらした直接の原因かどうかは判断できませんでした。 現在、九州では照葉樹林を保全するプロジェクトが実施されています。保全プロジェクトの推進においては、環境変化に対する森林の脆弱性を評価することが重要になります。将来的に台風の強大化が予測されており、本研究の結果から照葉樹林への影響も大きくなることが予測されます。環境変化で照葉樹林がどのように変化するかを今後も注意深く観測を続けていく必要があります。
写真1:台風で倒れた大木 |
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