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カミキリムシの多様性には、森林タイプより地理的特性の影響が大きい

2018年3月29日掲載

論文名

Patterns of cerambycid beetle species composition in relation to geographic features, climate and/or silvicultural treatments on different scales

(異なるスケールにおけるカミキリムシ群集と地理的特性、気候、施業との関係)

著者(所属)

岡部 貴美子(生物多様性研究拠点)、長谷川 元洋(四国支所)、槇原 寛(元森林総合研究所)

掲載誌

Journal of Insect Conservation、 21:771-779、December 2017、DOI: 10.1007/s10841-017-0020-1(外部サイトへリンク)

内容紹介

わが国では、「生物多様性地域連携促進法」が制定され、生物の保全における地域連携の必要性が強く認識されるようになりました。このような協働は、生物の分布域などを考慮して実施することが効果的です。これまでも、生物のまとまり(群集)における地域性を調べる研究が実施されてきましたが、昆虫などの小さな生物にはあまり目が向けられませんでした。

そこで私たちは、森林依存性の高い昆虫であるカミキリムシに着目し、北海道から南西諸島におよぶ日本各地において、スギ人工林や天然林などタイプの異なる森林でカミキリムシを採集しました。そして、1)カミキリムシ群集は森林のタイプによって異なるのか、2)カミキリムシ群集は地域によって異なるのか、について解析しました。その結果、カミキリムシ群集を最もよく区別したのは地域であり、全国的にみると「人工林」「天然林」などのタイプによるちがいは明確でないことが分かりました。南西諸島のカミキリムシ群集は、日本のどの地域とも異なっていました。南西諸島を除くと、調査地点が距離的に近いほど似る傾向が明確になりました。

これらのことから南西諸島の生物群集は他の地域と大きく異なり、保全上重要であることが改めて示されました。その他の地域では、調査地点間の距離が近いほどカミキリムシ群集はよく似ていたことから、近隣の地域間で生物相や生態系管理に関して情報共有するといった連携は保全活動上重要であることが示されました。

 

図:各調査地点のカミキリムシ群集の類似度

図:各調査地点のカミキリムシ群集の類似度(カミキリムシ群集がどれだけ似ているかを示す指標)を地域ごとに異なる色の図形で図示した。
a:南西諸島(赤)を含めた場合。黒色は南西諸島以外の調査地点の群集を示す。
b:南西諸島を除いた場合。それぞれの図形の位置が近いことは、カミキリムシ群集が良く似ていることを示す。
たとえば図aでは赤色の図形どうしはそれぞれ近くにまとまっているが、このことは南西諸島のカミキリムシ群集は、南西諸島の調査地点どうしではよく似ていることを示す。

 

写真:人工林内に設置したマレーゼトラップ

写真:人工林内に設置したマレーゼトラップ。このトラップを各調査地点に設置し、カミキリムシを採集した。

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