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積雪内部での水の流れがMRIで見えた

2020年1月17日掲載

論文名

Nondestructive three-dimensional observations of flow finger and lateral flow development in dry snow using magnetic resonance imaging. (核磁気共鳴画像法(MRI)を用いた乾雪内部の選択流と側方流の形成過程の非破壊3次元計測)

著者(所属)

勝島 隆史 (森林防災研究領域)、安達 聖・山口 悟 (防災科学技術研究所)、尾関 俊浩 (北海道教育大学札幌校)、熊倉 俊郎 (長岡科学技術大学)

掲載誌

Cold Regions Science and Technology、170、102956、February 2020 DOI:10.1016/j.coldregions.2019.102956(外部サイトへリンク)

内容紹介

融雪期には急激な融雪や降雨によって雪崩や地すべり、河川の洪水などの災害が発生します。このような災害の予測には、積雪内部での水の流れを正確に捉える必要があります。積雪内部の水は水みちと呼ばれる選択的な流路を形成しながら流下することが知られています。しかし、その形成の様子を捉えるには雪を切り出して観察する必要がありますが、一度切り出すと、その後の変化を捉えることができないというジレンマがあり、詳細については不明でした。

そこで、積雪内部での水の浸透現象を解明するために、医療の分野で広く一般的に利用されるMRI(核磁気共鳴画像法)を駆使して実験を行いました。実験では、野外から不攪乱で採取した積雪試料に対して水を人為的に与えて、積雪内部の水の分布を高い分解能で短時間に計測しました。その結果、積雪内部での3次元的な水の流れを詳細に捉えることに初めて成功しました。今回の実験では、直径数mm程度の水みちが形成し、時間の経過とともに流路の数が増えることが観察されました。

このような結果は、積雪の内部で水はどのように流れるのかという問いに対して、新たな考え方を提示するものであり、積雪内部の物理現象の解明においてMRIによる可視化技術が有効であることを示したものです。このような、融雪水の集中現象を理解することで、これまで予測が困難だった融雪期の山地災害の発生メカニズムの理解が大きく前進すると期待されます。

(本研究は2019年11月27日にCold Regions Science and Technology誌にオンライン公表されました。)

 

図1:浸透実験に使用した装置

図1:浸透実験に使用した装置。
左図)実験装置全体の概念図。
右図)実験に使用したコンパクトMRI。医療分野で用いられるMRIよりも高分解能な撮像が可能。

 

図2:MRIにより可視化した積雪内部での浸透現象

図2:MRIにより可視化した積雪内部での浸透現象。図の白い部分が水を含んだ箇所、赤色矢印は水の流れを示す。初期に形成された水みちは途中で2つに分岐した。その後、別の新たな水みちが形成した。

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森林総合研究所 研究ディレクター 大丸 裕武
【研究担当者】
森林総合研究所 森林防災研究領域 十日町試験地 勝島 隆史
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