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2020年6月15日掲載
論文名 |
Effects of combined CO2 and O3 exposures on net CO2 assimilation and biomass allocation in seedlings of the late-successional Fagus crenata. (遷移後期樹種のブナの光合成とバイオマス配分に及ぼす二酸化炭素とオゾンの濃度上昇の影響) |
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著者(所属) |
飛田 博順(植物生態研究領域)、小松 雅史(きのこ・森林微生物研究領域)、原山 尚徳(北海道支所)、矢崎 健一(植物生態研究領域)、北岡 哲(森林総合研究所PD、北海道大学)、北尾 光俊(北海道支所) |
掲載誌 |
Climate, 7(10),117, 2019 DOI:10.3390/cli7100117(外部サイトへリンク) |
内容紹介 |
化石燃料の使用等による大気中の二酸化炭素(CO2)濃度の上昇は、樹木の光合成を高め成長を促進させることが予想されます。一方、東アジアの経済発展に伴う越境大気汚染によるオゾン(O3)濃度の上昇は樹木の光合成を阻害し、成長に負の影響を及ぼすことが危惧されます。実際にブナは、現在のCO2環境下でO3濃度上昇によるストレスを受けやすいことが知られています。そこで本研究では、これらの大気中のガスの濃度変化が樹木の成長に及ぼす影響を予測するために、CO2とO3の片方または両方の濃度が高い環境下でブナ稚樹を育て、現在のCO2とO3の環境下で育成した場合との光合成と成長の違いを調べました。O3は葉の気孔から吸収され傷害を起こすため気孔の開き具合も調べました。その結果、高CO2環境下でO3濃度が上昇した場合、現在のCO2 とO3環境下に比べてブナ稚樹の成長が促進されました(図)。この原因として、高CO2高O3環境下では、気孔が閉じ気味となりO3吸収量が減少したこと、葉の光合成が上昇したこと、稚樹1本あたりの葉量が増加したことが考えられました。 以上より、CO2とO3の両方の濃度が高い環境下でのブナ稚樹の成長は、O3濃度だけが上昇した場合と違い促進されることが分かりました。この結果は、将来の大気中のガスの濃度変化に対するブナの成長反応を予測し、炭素固定量を予測する際に役に立ちます。 (本研究は2019年にClimate誌に掲載されました)
図:高二酸化炭素(CO2)濃度と高オゾン(O3)濃度の環境下で生育するブナ稚樹1本の乾燥重量
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