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2020年8月7日掲載
論文名 |
Chemical sequential extraction of O horizon samples from Fukushima forests: assessment for degradability and radiocesium retention capacity of organic matters(福島の森林の堆積有機物層試料に対する逐次抽出: 有機物の分解性および放射性セシウムの保持能の評価) |
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著者(所属) |
眞中 卓也(立地環境研究領域)、小野 賢二(東北支所)、古澤 仁美(立地環境研究領域)、小河 澄香(きのこ・森林微生物研究領域)、三浦 覚(震災復興・放射性物質研究拠点) |
掲載誌 |
Journal of Environmental Radioactivity、2020年6月、 DOI:10.1016/j.jenvrad.2020.106306(外部サイトへリンク) |
内容紹介 |
東日本大震災による福島第一原発事故で放出された放射性セシウム(137Cs)は、福島周辺の森林に沈着し、事故直後には林床の落葉層(堆積有機物層)にその多くが存在していました。落葉層の放射性セシウムの濃度は年々減少傾向にありますが、森林内の放射性セシウムの循環や滞留に重要な役割を果たしていると考えられています。 これまで落葉層の放射性セシウムは、放射性セシウムを強力に固定する粘土鉱物とは異なり、落葉が分解して水に溶けたり細かく砕けたりしていく過程で、徐々に根に吸収されたり微生物に取り込まれたりするなどの形で、早期に森林生態系の物質循環に取り込まれていくと考えられていました。今回私たちは、森林の落葉層の有機物が放射性セシウムをどの程度保持しているのかを調べるために、事故以来毎年採取した落葉サンプルを用いて、逐次抽出法による放射性セシウムの分画(註1)を行いました。その結果、酸に溶けやすいと考えられていた放射性セシウム(註2)が、どの年でも、酸にも溶けない画分に最も多く含まれることが分かりました。この結果は、微生物による分解を受けにくい酸不溶性有機物が、一部の放射性セシウムを強く保持していることを示しており、落葉層の放射性セシウム保持力はこれまで予想していた以上に高いことを示唆しています。このような、落葉層の有機物と強く結びついた放射性セシウムの発見は、福島地域の森林における放射性セシウムの循環プロセスや将来の変化を予測する上で、重要な意味を持ちます。 (註1)サンプルを複数の試薬によって段階的に処理することで、それぞれの試薬への溶けやすさの違いに応じて、性質の異なる成分に分画する手法。本研究では、有機溶媒(エタノール・ベンゼン)や酸(硫酸)への溶けやすさの違いを、落葉層の有機物による放射性セシウムの保持されやすさの指標とした。 (註2)セシウムはアルカリ金属元素のひとつであり、酸に溶けやすい性質を持つ。
(本研究は2020年6月にJournal of Environmental Radioactivity でオンライン公表されました。)
図:落葉層の放射性セシウム濃度の時間変化とその内訳 |
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