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2020年10月19日掲載
論文名 |
Biomass and Production Rates of Fine Roots in Two Mangrove Stands in Southern Thailand(タイ南部の2つのマングローブ林における細根の現存量と生産速度) |
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著者(所属) |
野口 享太郎(東北支所)、Sasitorn Poungparn(Chulalongkorn University)、Suthathip Umnouysin(Chulalongkorn University、Silpakorn University)、Pipat Patanaponpaiboon(Chulalongkorn University)、Decha Duangnamol(Kasetsart University)、米田 令仁(四国支所)、宇都木 玄(研究ディレクター)、佐藤 保(森林植生研究領域)、田淵 隆一(震災復興・放射性物質研究拠点) |
掲載誌 |
JARQ (Japan Agricultural Research Quarterly)、54(4)、October 2020 URL:https://www.jircas.go.jp/ja/publication/jarq/2019j04(外部サイトへリンク) |
内容紹介 |
マングローブ林は材や燃料の生産に利用されるほか、近年では炭素蓄積などの生態系機能が注目されています。光合成により固定された炭素は、地上部だけでなく根の成長にも使われることから、森林の炭素蓄積機能を評価するには地上部と地下部の両者の生産量を知る必要があります。しかし、土壌中に隠れた根の調査には困難を伴うことが多く、マングローブ林の根については情報が不足していました。そこで本研究では、タイ南部の代表的なマングローブ林であるウラジロヒルギダマシ林(筍根を持つタイプ)とフタバナヒルギ林(支柱根を持つタイプ)において、深さ0-40cmにおける細根(直径2mm未満の根)の生産量を調査しました(写真)。 その結果、1年間の細根生産量は、ウラジロヒルギダマシ林で約450g/m2(ヘクタール当たり4.5トン)、フタバナヒルギ林で約740g/m2(ヘクタール当たり7.4トン)となり、それぞれ落葉量(≒葉の生産量)の60%、95%に相当するほど大きいことが分かりました。また、ウラジロヒルギダマシ林における細根の生産は土壌の表層(深さ0-20cm)で盛んなのに対して、フタバナヒルギ林では下層(深さ20-40cm)においても表層と同程度の細根生産があるなど違いも見られました(図1)。 これらの結果は、マングローブ林における根の生産量と、その土壌中の分布、地上部生産量とのバランスが、樹種や生育地の特性により大きく異なることを示唆する新たな知見です。また、本研究で得られた細根生産量のデータは、これらのマングローブ林の炭素蓄積速度を評価するのに有用な知見になります。
(本研究は2020年10月にJARQで公表されました。)
写真:調査を行ったマングローブ林。(左)ウラジロヒルギダマシ林(Avicennia alba、筍根※が地表に密生している)。(右)フタバナヒルギ林(Rhizophora apiculata、地上に多くの支柱根が見られる)。
図1:ウラジロヒルギダマシ林(左)とフタバナヒルギ林(右)の深さ0-40cmでの細根生産量。 |
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