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野生きのこのススケヤマドリタケは土壌のカリウムが多いと放射性セシウムを吸収しにくい

2020年12月21日掲載

論文名

Spatial distribution of 137Cs concentrations in mushrooms (Boletus hiratsukae) and their relationship with soil exchangeable cation contents(ススケヤマドリタケのセシウム137濃度の空間分布と土壌の交換性塩基濃度の関係)

著者(所属)

小松 雅史(きのこ・森林微生物研究領域)、鈴木 也実・小川 周太・太田 祐子(日本大学)

掲載誌

Journal of Environmental Radioactivity、2020年10月 DOI:10.1016/j.jenvrad.2020.106364(外部サイトへリンク)

内容紹介

2011年の福島第一原発事故によって東日本の広域は放射性物質の影響を受けました。野生きのこは放射性セシウム濃度が高いものが多く、2020年8月においても11県113市町村で食用としての出荷が制限されています。野生きのこの放射性セシウム濃度は同じ種であっても数倍ばらつくことが知られていましたが、その理由は明らかではありませんでした。農作物や樹木では土壌の交換性カリウム濃度が高いほど放射性セシウム濃度が低くなることが知られており、発生地点の土壌環境によって子実体(きのこ)の放射性セシウム濃度も影響を受けることがばらつきを生じる理由として考えられます。

そこで、放射性セシウム(137Cs)沈着量がほぼ等しい2つの調査地に発生した、ススケヤマドリタケ(写真)の子実体の放射性セシウム濃度と土壌の化学性について、調査地間で比較しました。その結果、土壌の交換性カリウム濃度が高い方で子実体の放射性セシウム濃度が低いことがわかりました(図)。このことは、土壌のカリウムによってきのこのセシウム吸収が影響を受けることを示しています。

イネなどの農作物ではカリウムを施用することで植物体中の放射性セシウムの濃度が低くなることが知られています。今回の成果は、きのこについてもカリウムの施用によって放射性セシウム濃度が低くなる可能性を示しています。

 

(本研究は2020年10月に Journal of Environmental Radioactivity で公表されました。)

 

写真1:調査プロット内に発生したススケヤマドリタケの子実体写真2:調査プロット内に発生したススケヤマドリタケの子実体

写真:調査プロット内に発生したススケヤマドリタケの子実体

 

図:ススケヤマドリタケの放射性セシウム濃度と表層土壌の交換性カリウム濃度

図:ススケヤマドリタケの放射性セシウム(137Cs)濃度(左)は表層土壌(0-5cm層)の交換性カリウム濃度(右)が高い調査地で低くなっている

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【研究担当者】
森林総合研究所 きのこ・森林微生物研究領域 小松 雅史
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