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モノテルペン濃度は夏以外の季節にも雨上がりに高まっている

2021年6月14日掲載

論文名

Increases in Biogenic Volatile Organic Compound Concentrations Observed after Rains at Six Forest Sites in Non-Summer Periods (夏以外の時期に6森林サイトにおいて降雨後に観測された生物起源揮発性有機化合物濃度の上昇)

著者(所属)

深山 貴文(森林防災研究領域)、森下 智陽(東北支所)、小南 裕志・野口 宏典・安田 幸生・吉藤 奈津子・岡野 通明(森林防災研究領域)、山野井 克己・溝口 康子(北海道支所)、高梨 聡(関西支所)、北村 兼三(九州支所)、松本 一穂(琉球大学)

掲載誌

Atmosphere、11(12):1381、MDPI、2020年12月 DOI:10.3390/atmos11121381(外部サイトへリンク)

内容紹介

モノテルペン(C10H16)は森の香り物質の1つであり、その酸化物は地球の気候に大きく影響するエアロゾルとなることから温暖化予測において重要な物質です。これまで一般に森林のモノテルペン濃度は、夏にのみ葉から揮発する量が増えて大気中の濃度が高まると考えられていましたが、季節変動特性の検証が不十分でした。そこで本研究では、国内6か所の森林において毎月1~2回の頻度で約3年間にわたって大気中のモノテルペン濃度を観測しました。

この観測の結果、一般に考えられていた夏以外の20℃未満の低温条件下でも、スギ-ヒノキ林、アカマツ林、2か所の落葉広葉樹林で大気中のモノテルペン濃度は高い場合があることが分かりました。低温条件で生じた高いテルペン濃度は、その約6割が1日に15mm以上のまとまった雨があった週に見られ、またその約7割が日中の気温の温度差が10度以上となった時に観測されました。これらの結果は森林生態系からのモノテルペンの放出特性がこれまでに考えられていた以上に複雑であり、多様な気象要因や森林のモノテルペン蓄積量の季節変動等が影響していることを示すものです。今後、これらの変動要因にも着目しながら国内の森林内の観測網を活用し、森林のモノテルペン放出量の変動メカニズムを解明していきます。

(本研究は、2020年12月にAtmosphereで公表されました。)

 

図:気温-モノテルペン濃度関係の一例
図:気温-モノテルペン濃度関係の一例(スギ-ヒノキ林)
赤丸で囲まれた部分では20℃未満だった低温条件下で高濃度のモノテルペン濃度が観測されている。森林大気中のモノテルペン濃度は夏以外にも高まる性質があることを示している。 

お問い合わせ先

【研究推進責任者】
森林総合研究所 研究ディレクター 平田 泰雅
【研究担当者】
森林総合研究所 森林防災研究領域 深山 貴文
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