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2021年8月10日掲載
論文名 |
茨城県における半自然草原の変遷と戦略的保全の重要性 |
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著者(所属) |
八巻 一成(森林管理研究領域) |
掲載誌 |
ランドスケープ研究、84巻5号、609-614、日本造園学会、2021年5月 DOI:10.5632/jila.84.609(外部サイトへリンク) |
内容紹介 |
縄文時代から火入れや放牧、草刈りなどの人間活動によって維持されてきたと言われる半自然草原(注)が、全国各地から失われようとしています。明治時代には国土の1割を占めていたとされる草原ですが、半自然草原の減少によって現在は1%程になりました。半自然草原は希少な動植物のすみかであるとともに、観光やレクリエーションの場ともなっており、独自の生態系サービス(恵み)を提供しています。消えゆく半自然草原の未来を探るため、茨城県を対象に歴史と現状を調べました。 茨城県でも明治時代には県土の1割近くが草原でしたが、現在では0.2%にまで減ってしまいました。しかもその多くは土地造成などによる新たな草原が占めており、以前から存在していた半自然草原は非常に少なくなりました。半自然草原を維持してきた人間活動が途絶えつつある今、未来にこの生態系を遺すためには、残り僅かな半自然草原を計画的に保全していく必要があります。 茨城県に残る半自然草原の一例として、筑波山つつじヶ丘にかつての名残をとどめる場所があります(写真1、2)。今でも半自然草原由来の植物が登山道脇に花を咲かせ、来訪者に憩いをもたらしてくれます。半自然草原の恵みと魅力を多くの人がじかに触れて感じられるこの一角は、保全にふさわしい貴重な半自然草原の一つと言えるでしょう。 (注)半自然草原:自然の状態で成立している自然草原に対し、継続的な人間活動のために、植生遷移が進まなくなることによって草原の状態を保っているもの。
(本研究は、ランドスケープ研究において2021年5月に公表されました。)
写真1:筑波山にあったかつての草原(出典:NPO法人つくば環境フォーラム「筑波山自然観察ハンドブック」2012年)
写真2:かつての草原の名残をとどめる場所 |
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