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樹木の成長量を基準として森林経営を考えよう

2021年8月11日掲載

論文名

平均連年成長量(MAI)から見た土地期望価(LEV)による林業の経営判断基準

著者(所属)

宇都木 玄(研究ディレクター)、久保山 裕史(森林経営・政策領域)

掲載誌

日本森林学会誌、103巻3号、200-206、日本森林学会、2021年6月

内容紹介

人工林を有効活用するためには経済的な視点での評価が重要です。この点に関してこれまでは施業方法を中心に議論されてきましたが、本研究ではスギを対象として林地の生産力で経済性を評価する事を試みました。評価方法は造林、素材生産、運搬流通経費を支出とし、単位面積当たり1年間に増える樹木の材積(MAI)と立木価格(ウッドショック以前の2019年の値)を乗じたものを収入としました。これを投資経営対象指標として用いる土地期望価注1)より分析しました。文献や林野庁の資料を解析したところ、平均的なスギのMAIは約10m3/ha・年(3~30m3/ha・年)でした。現状の立木価格とコストを想定した場合、平均的なスギのMAIでは永遠に土地期望価注1)はプラスにならず、林業経営は成り立たないことが分かりました。現状の立木価格とコストで経営が成り立つためにはMAIが17m3/ha・年かつ輪伐期注2)は91年となり、さらにコストを10%程度削減できれば40年程度の輪伐期注2)で投資経営の対象となりました。これらのことからMAIを基準として人工林のゾーニングを行い、生産コストと造林・初期保育コストから輪伐期注2)を設定したうえで経営判断を行うことが重要であることがわかります。

注1)土地期望価:u年後の伐期で得られる収益を、一定の利率で割り戻した現在の価値であり、マイナスの場合は現在の価値がマイナスであることを示す。

注2)輪伐期:主伐を繰り返す年周期(土地期望価におけるuと同等)。

(本研究は、日本森林学会誌において2021年6月に公表されました。)

 

図1:文献調査によるスギ人工林の林齢と蓄積の関係

図1:文献調査によるスギ人工林の林齢と蓄積の関係。この関係の傾きがMAIである。

 

図2:設定輪伐期に対する土地期望価

図2:現状のコストで10m3/ha・年のMAIの場合、設定輪伐期(20年~100年)に対する土地期望価はプラスにならない。

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森林総合研究所 研究ディレクター 宇都木 玄
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森林総合研究所 研究ディレクター 宇都木 玄
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