研究紹介 > 研究成果 > 研究成果 2021年紹介分 > つる植物のクローンによる広がり方とそのスピードは種によって異なる
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2021年8月11日掲載
論文名 |
Interspecific variation in clonality in temperate lianas revealed by genetic analysis: Do clonal proliferation processes differ among lianas?(温帯木本性つる植物のクローン性における種間変異の遺伝解析による解明:つる植物によってクローン成長プロセスは異なるのか?) |
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著者(所属) |
森 英樹・上野 真義(樹木分子遺伝研究領域)、上條 隆志・津村 義彦(筑波大学)、正木 隆(研究ディレクター) |
掲載誌 |
Plant Species Biology、2021年8月 DOI:10.1111/1442-1984.12348(外部サイトへリンク) |
内容紹介 |
つる植物は、樹木に巻き付いて幹を変形させたり、よじ登って葉を繁らせることで樹木の成長量を低下させます。新植地では放っておくとつる植物が急速に広がるため、それを未然に防ぐつる切りの作業が初期保育では欠かせません。つる植物のこの急拡大はクローンを作ることでもたらされますが、多様なつる植物の種ごとのクローン拡大の仕組みはほとんどわかっていません。 そこで本研究では、つる植物のクローン拡大の多様性を解明するため、6haの天然林調査区で主な4種(フジ、イワガラミ、ツルマサキ、ツタウルシ)のクローン構造(遺伝的に同一の個体の分布)を調べて比較しました。その結果、樹木に巻き付いて登るフジは最初の1本が樹木に取り付いて登りきった後に林床でクローンが拡大し始めるのに対し(図左)、付着根で樹木に貼り付いて登るイワガラミ、ツルマサキ、ツタウルシはまず林床でクローンが拡大した後に樹木を登ることがわかりました(図右)。フジは、先に登って明るい樹冠部に到達した1本が豊富な光合成産物を得てクローン作出にまわすため、他の3種よりも多くのクローンを作り、次に巻き付く木にも到達しやすくなると考えられました(図左下部)。 このように一口につる植物と言っても、クローンによる広がり方は種によって異なることがわかりました。人工林の育成や森林生態系の保全を効率的に行うには、多様なつる植物の種ごとの特性を理解することが必要です。
(本研究はPlant Species Biologyにおいて2021年8月にオンライン公表されました。)
図:つる植物による2種類のクローン成長様式のイラスト。 |
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