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大規模な土壌乾燥実験からスギ成木の光合成機能への乾燥の影響を明らかにした

2021年10月8日掲載

論文名

Effects of throughfall exclusion on photosynthetic traits in mature Japanese cedar (Cryptomeria japonica (L.f.) D. Don.)(降雨遮断によるスギ成木の光合成特性への影響)

著者(所属)

田中 憲蔵(国際農林水産業研究センター)、井上 裕太・荒木 眞岳・川崎 達郎・北岡 哲(植物生態研究領域)、阪田 匡司・釣田 竜也(立地環境研究領域)、齊藤 哲(関西支所)

掲載誌

Forests、12、971、2021年7月 DOI:10.3390/f12080971(外部サイトへリンク)

内容紹介

気候変動にともなう大気や土壌の乾燥が、樹木の成長低下や枯死を引き起こすことが懸念されています。日本の主要な造林樹種であるスギは湿った環境を好むため、その生育は将来の乾燥により大きな影響を受ける可能性があります。しかし、個体サイズの大きな成木では、成長や生存を左右する光合成機能に土壌乾燥がどのように影響するかはほとんど分かっていませんでした。

約40年生のスギ林内に約10m四方の雨よけを設置し(写真)、降雨を遮断しました(乾燥区)。そして、高さ20mの足場から葉に直接アクセスして光合成や蒸散能力を2年間測定し、雨よけを設置しない対照区と比較しました。乾燥区では土壌が強く乾燥した状態になりましたが、午前中の葉の光合成や蒸散能力は対照区と大きな違いはありませんでした。一方、気温が高く空気の乾燥が強くなる午後には、乾燥区では対照区に比べて葉の気孔注1) が閉じ気味になり光合成が低下しました(図)。

つまり、スギ成木は土壌乾燥に対してできるだけ気孔を閉じずに光合成を維持し、乾燥の程度が大きくなってからはじめて、水消費量を抑制するために気孔が閉じ気味になり光合成が低下することがわかりました。このような水分消費型の応答は、短期間の弱い乾燥に対しては成長を維持する一方で、乾燥が長期間続くような場合には梢端枯れなどの乾燥害を受ける可能性もあると考えられます。今回得られた知見は、気候変動により人工林がどのような影響を受けるのかを予測するのに役立ちます。

注1) 気孔:主に葉の裏にある小さな孔のことで、光合成を行うときは開いて二酸化炭素を取り入れるが同時に水蒸気として水分も失われるため、乾燥ストレスを受けると閉じることが多い。

(本研究は、2021年7月にForestsにおいてオンライン公表されました。)

 

写真(左):スギ林内に設置した雨よけ 写真(右):林冠アクセス用の足場の上部

写真:約40年生のスギ林内に設置した約10m四方の雨よけ(左)と林冠アクセス用の高さ20mの足場の上部(右)

 

図 土壌が強く乾燥した夏のスギ成木の針葉における午前と午後の光合成速度

図 土壌が強く乾燥した夏(2020年8月)のスギ成木の針葉における午前と午後の光合成速度。午前中は乾燥区のスギも対照区のスギとほぼ同じ光合成速度を示したが、乾燥ストレスが強くなる午後には対照区よりも乾燥区のスギのほうが光合成速度は大きく低下した。

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森林総合研究所 研究ディレクター 平田 泰雅
【研究担当者】
森林総合研究所 植物生態研究領域 荒木 眞岳
【広報担当者】
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