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シカによる立木の皮剥ぎの起こりやすさはシカの多さ、雪の深さとシカの好みで決まる

2021年12月2日掲載

論文名

ニホンジカによる立木の剥皮発生確率に影響する要因の地域間での類似点と相違点 −複数都県のデータを用いた検証−

著者(所属)

飯島 勇人(野生動物研究領域)、丸山 哲也(栃木県林業センター)、坂庭 浩之(群馬県林業試験場)、森田 厚(埼玉県寄居林業事務所)、新井 一司(東京都農林総合研究センター)、岩井 淳治(新潟県森林研究所)、大澤 正嗣(山梨県森林総合研究所)、岡本 卓也(岐阜県森林研究所)、小松 鷹介(静岡県農林技術研究所森林・林業研究センター)、石田 朗(愛知県森林・林業技術センター)

掲載誌

日本森林学会誌、103巻5号、344-350、日本森林学会、2021年10月 DOI:10.4005/jjfs.103.344(外部サイトへリンク)

内容紹介

ニホンジカ(以下、シカ)の分布拡大やそれにともなう森林の立木剥皮(以下、皮剥ぎ、写真)が、日本各地で問題となっています。このような皮剥ぎを効率的に防ぐには、皮剥ぎを誘発する要因を明らかにする必要があります。しかし、シカは都道府県境を跨いで移動するにもかかわらず、皮剥ぎを誘発する要因の検討は、これまで大きなスケールでも1都道府県単位でしか検討されてきませんでした。

このたび、関東付近の9都県を対象に、皮剥ぎを誘発する要因を検討しました。その結果、ある森林において皮剥ぎが発生する確率は、最大積雪深が大きくなると一旦高くなりますが、最大積雪深がさらに大きくなると減少しました(図)。さらに、立木1本単位で見ると、皮剥ぎはシカが多い地域で起こりやすく、またシカが好んで皮剥ぎする樹種は9都県間で比較的共通していました。リョウブは全都県でシカが好んで皮剥ぎをしていました。またウラジロモミ、エゴノキ、ツガ、ヒノキも広域で好んで皮剥ぎされ、ついでアオダモ、アブラツツジ、キリ、コミネカエデ、サラサドウダン、シラビソ、ソヨゴ、ナツツバキ、マユミ、ミズキ、ヤブツバキの被害も目立ちました。

これらの結果から、シカによる皮剥ぎを誘発する要因は主にシカの多さ、雪の深さ、シカの樹種に対する好みであることがわかりました。この成果を用いれば、皮剥ぎを防ぐための防除資材の設置場所を決める際に、森林の場所や樹種を考慮して優先度をつけることができるようになり、林業被害や天然林における特定の樹種への影響を効率的に抑制できると考えられます。

(本研究は、2021年10月に日本森林学会誌において公表されました。)

 

写真:シカが皮剥ぎした立木

写真:シカが皮剥ぎした立木

 

図:剥皮発生に関わる要因のうち積雪深のみが与える影響

図:剥皮発生に関わる要因のうち積雪深のみが与える影響(解析によって得られたモデルを用いて計算し、わかりやすく予測値を描画したもの)

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