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掲載日:2022年5月18日
日本の林業の労働者1,000人当たりの死傷災害数は25人と、全産業の平均値の約10倍であるため、林業の安全性向上が大きな課題となっています。労働災害の発生率は年齢層によって異なることが知られていますが、どのような労働災害がどの年齢層によって生じているのか、具体的には分かっていませんでした。そこで、2010年から2015年の災害事例および統計資料から、年齢層別の労働災害発生率を原因ごとに算出しました。その結果、林業の労働災害の主要な原因は倒れる立木への接触(立木接触)であり、年齢層により被災状況に違いがあることが分かりました。立木接触による60歳以上の死亡災害発生率は、50歳代の1.8倍、40歳代の6.3倍と各年齢層に比べて非常に高く、死亡災害低減のためには60歳以上の作業員の安全対策を強化すべきであると考えられました。一方、立木接触による傷害災害(死亡以外の労働災害)の発生率は10歳代が最大であり、死亡災害とは異なる傾向を示しました。また立木接触が原因の傷害災害発生率は多くの年代で高い値を示したことから、傷害災害低減に向けては、全世代で立木接触に対する安全対策を強化すべきであることが分かりました。立木接触が原因の労働災害の多くは伐倒時に発生することが分かっていますので、本研究の成果は伐倒時の安全対策を考えるうえでの基礎的な資料となります。
(本研究は、2022年1月に森林利用学会誌において公表されました。)
図:労働災害の主要な原因別の災害発生人数
左図:林業労働者1000人当たりの死亡災害発生人数、右図:林業労働者1000人当たりの傷害災害発生人数
(労働災害数の多い上位3種の原因を記載している)
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