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掲載日:2023年3月17日
楊枝(ようじ)や精油の原材料となる落葉低木クロモジに含まれる香り成分は、同じ生育環境であっても個体によって組成の違いが大きいことが分かりました。香り成分を多く含む個体を利用した栽培技術など、日本固有の森林資源であるクロモジをより効率的に利用するために重要な成果です。
高級楊枝作りが受け継がれている千葉県君津市近辺の3地点に自生する複数の個体を対象に、同じ年の6月(成葉期)から10月(落葉期)にかけて継続的に採取した葉と枝(写真)に含まれる抽出成分を個体別に調べました。香りなどに関係するテルペノイド化合物群を分析したところ、生育環境が同じでも、化合物の種類や含有割合が個体によって異なっていました。また、多くの個体は季節の影響をあまり受けず、それぞれの特徴的な成分組成を維持していることもわかりました(図)。
クロモジはこれまで、同じ地域に自生する個体にはどれも同じような成分が含まれると見なされてきましたが、実際には個体ごとに個性豊かであることを初めて確認しました。
(本研究成果は、2022年11月にJournal of Wood Scienceでオンライン公開されました。)
写真:試料としたクロモジ(Lindera umbellata)
図:同一地域に自生するクロモジに含まれる主なテルペノイド化合物の含有割合と季節変動(3地点のうち1地点を抜粋)。
縦軸は乾燥重量当たりの含有割合、横軸は試料を採集した月、各個体は5メートル程度離れて生育しています。8月に含有割合が増加傾向にある個体もありますが、成分組成などの個体ごとの特徴は、季節を通して葉と枝の両方で維持されていることが分かります。
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