研究紹介 > 研究成果 > 研究成果 2023年紹介分 > 南国樹木に脅威の「南根腐病」、根よりも先に葉に影響
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掲載日:2023年12月18日
「南根腐病」(みなみねぐされびょう)は南西諸島や小笠原諸島をはじめ、東南アジアなど熱帯地域のさまざまな樹木を枯らしてしまう樹木の病気です。この病気は樹木の根に菌糸が侵入することで感染しますが、その際に根が腐るよりも先に葉の気孔が閉じるなど、葉に影響を与えることがわかりました。葉を調べることによって病気の感染が発見できる可能性もあり、南根腐病の被害拡大の原因解明につながる成果です。
研究グループは、南根腐病の病原菌であるシマサルノコシカケを、小笠原諸島で被害が報告されているアカギ(半落葉性)とシャリンバイ(常緑性)の実生の根に感染させ(写真1)、菌がどこまで根の組織に侵入したかを顕微鏡で観察しながら(写真2)、葉や根の機能を調べました。
その結果、いずれの樹種も最初に葉の気孔が閉鎖し、その後一か月から二か月後くらいに根が腐って枯死しました。そのため、感染後しばらくは根の機能が保たれ、すぐに水欠乏状態には陥りませんでした。
また、光合成がより活発なアカギは、感染後でも光阻害(強すぎる光で光合成が障害をうける現象)を抑えるなど、障害に抵抗する反応がシャリンバイよりも顕著にみられました。このように、樹種によって本病によるストレスに対する葉の反応が異なることもわかりました。
(本研究はEuropean Journal of Plant Pathologyにおいて2023年8月にオンライン公開されました。)
写真1:感染して枯れたアカギ(右端は未接種)
写真2:感染したアカギの根の横断面の蛍光観察像。緑色が病原菌の菌糸、赤や青は根の組織。スケールバーは200µm。
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