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地すべり発生リスクの推定に向けた高精度な地下水圧予測モデルの開発

掲載日:2024年3月8日

地すべり発生に大きく影響する降雨時や融雪時の地下水圧の変動を高精度に予測できるモデルを開発して、新潟県内の地すべり地での長期観測データを用いてその有効性を明らかにしました。これは、地すべり発生リスクをより精度良く推定する方法の開発に繋がる成果です。

研究グループは2014年から2016年にかけて、新潟県上越市にある地すべり試験地(写真)において、雨や積雪等の気象や地すべり斜面内の地下水圧などの長期観測を行いました。これら長期観測データを基にして、雨水や融雪水の地中への浸透による地下水圧への短期的な変化を予測できるモデルを開発して、実測の地下水圧の変化を再現出来ることを明らかにしました(図)。

降雨と融雪では地中への水の浸透パターンが異なるので、一つのモデルでそれぞれを精度良く再現することはこれまで困難でした。しかし、観測技術の精緻化と従来モデルの改良により、降雨と融雪の浸透を一つのモデルで融合して計算することが可能になりました(図)。さらに、特定地点の地下水圧を再現するだけでなく、同じ地すべりが起きる斜面内の異なる深さや場所での地下水圧の最高値も予測できる様になりました。

本研究は、Landslides誌において2023年11月に公開されました。)

写真:地すべり試験地の全景
写真:地すべり試験地の全景

図:雨水や融雪水で変動する地下水圧の観測値と計算値の例
図:雨水や融雪水で変動する地下水圧の観測値と計算値の例。
(い)台風による短時間の豪雨
(ろ)長時間繰り返し降り続く雨
(は)日中に繰り返し生じる融雪

図は、論文内の図を基に作成しました。

  • 論文名
    Semiempirical modeling of the transient response of pore pressure to rainfall and snowmelt in a dormant landslide. (休止地すべりにおける降雨と融雪に対する間隙圧の過渡応答の半経験的モデリング)
  • 著者名(所属)
    大澤 光(森林防災研究領域)、松四 雄騎・松浦 純生(京都大学防災研究所)、岡本 隆(森林防災研究領域)
  • 掲載誌
    Landslides、Springer Nature, November、2023年11月 DOI:10.1007/s10346-023-02158-9(外部サイトへリンク)
  • 予算区分
    JSPS科研費(20K14562)
    JSPS科研費(21KK0015)
  • 研究推進責任者
    研究ディレクター 玉井 幸治
  • 研究担当者
    森林防災研究領域 大澤 光

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