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山村における戦後から現在までの山菜や木の実の利用変遷を明らかにした

掲載日:2024年6月6日

福島県・奥会津の只見町で食利用されてきた様々な山菜や木の実(写真)が、戦後、生育地の縮小や農作物の流通拡大に伴い、徐々に利用されなくなってきたことが、文献調査や高齢者への聞き取りで分かりました。地域の自然と文化の多様なつながりである「生物文化多様性」注)を保全し、次世代への継承方策を探る手がかりとなる重要な知見です。

多様な野生植物の食利用が古来盛んな同町における戦後変遷を明らかにするため、町史など文献の調査とともに、これらの食利用に詳しい高齢の町民11名に聞き取りを行いました。その結果、計69種の食利用が確認され、(A)オオバコやクズなど11種が戦中戦後の食糧難期のみ利用、(B)グミやキイチゴなど23種が高度成長期に利用衰退、(C)ワラビやゼンマイやクルミ類など33種が減少しつつも利用継続、(D)コシアブラなど3種が近年に利用開始、の4パターンに分けられました(表)。

変化の要因として(A)~(C)は、野菜や果物などを買う暮らしへの変化、河川・道路・圃場の整備や農薬利用、二次林や草地の管理低下による生育地の縮小、山菜や木の実の商品価値の低下、採取地へのアクセス性の低下が挙げられました。(D)は他地域から利用法が伝わったことによるものでした。

山菜や木の実の利用が少ない若齢世代にも地域の食文化に触れる機会を作り、地域間交流を進めることが、食文化を将来に継承していくために重要です。

注)生物文化多様性:地域の生態系に支えられた生物多様性と生活・文化の多様性(即ち、文化多様性)とを一体的に捉えて評価する考え方

本研究は、日本森林学会誌において2024年4月に公開されました。)

写真:多彩な山菜料理
写真:多彩な山菜料理。
上段左から、ゼンマイ煮浸し、ウルイ(オオバギボウシ)味噌汁、ウドやコゴミ(クサソテツ)の天ぷら。
中段左から、コゴミお浸し、エラ(ミヤマイラクサ)とウドの炒め物、ワラビお浸し。
下段左から、ミズ(ウワバミソウ)炒め、コシアブラご飯、アケビ(ミツバアケビ)新芽お浸し。
全て福島県只見町で撮影。

表:食用野生植物利用の主な変化パターン
表:食用野生植物利用の主な変化パターン
 

  • 論文名
    戦後の山村における食用野生植物資源利用の変遷 ―福島県只見町を事例に―
  • 著者名(所属)
    小柳 知代(東京学芸大学)、松浦 俊也(東北支所)、古川 拓哉・小山 明日香(生物多様性・気候変動研究拠点)
  • 掲載誌
    日本森林学会誌、106巻4号、77-78、2024年4月 DOI:10.4005/jjfs.106.77(外部サイトへリンク)
  • 研究推進責任者
    研究ディレクター 細田 和男
  • 研究担当者
    東北支所 松浦 俊也

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