研究紹介 > 研究成果 > 研究成果 2024年紹介分 > トドマツの枝の形態や変形しにくさは、その由来する地域によって異なる
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掲載日:2024年10月1日
北海道の主要な造林樹種であるトドマツの成木から枝を採取して調べたところ、その形態や変形しにくさを示す「曲げ剛性」が由来する地域によって異なることが分かりました。これはトドマツの雪害に対する新しい適応特性との関連を示唆しており、雪の降る量や雪の質が変化している気候変動下での雪害リスクの予測や適地適木の検討に役立つ成果です。
北海道に広く分布するトドマツは、特に雪が少ない東部の集団で雪による枝の被害が生じやすいことが知られています。これは雪に対する枝の抵抗性に遺伝的な地域変異があることを示唆していますが、どのような枝の特性が変異しているのかは不明でした。そこで本研究では、50年前に北広島市の試験地に植栽された、道内の様々な降雪環境に由来するトドマツの成木から枝を採取し、その形態や材質、物理的な特性などを網羅的に調査しました。このような実験は産地試験と呼ばれ、異なる地域に由来する樹木を同じ環境で育成することにより、樹木の特徴の遺伝的な変異を検出することができます。
その結果、枝の面積や木部密度、そして変形しにくさを示す「曲げ剛性」などが由来する地域によって異なることが分かりました。なかでも、曲げ剛性は由来地域の1月の降水量と正の相関があり、枝の特性と冬の環境条件に対する適応との関連性が示唆されました。
(本研究はJournal of Forest Researchにおいて2024年7月に公開されました。)
図:由来地域によって異なる枝の面積、木部密度、曲げ剛性。
棒グラフは地域ごとの平均値、エラーバーは標準誤差(N=9)、棒色の違いは地域の違いを示す。
※ 図は、論文中の図を基に作成しました。
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