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昆虫のウイルスからトランスポゾン類似ウイルスを発見

掲載日:2024年11月22日

さまざまな昆虫に感染する「昆虫ポックスウイルス」*1) から、「動く遺伝因子」と呼ばれ生物進化に重要な役割を持つトランスポゾン*2) に似た配列のウイルスを発見しました。この“ウイルスのウイルス”が昆虫のウイルス病流行に与える影響の解明や、ウイルスを用いた害虫防除法の高度化に加え、生物に多様性をもたらす進化の仕組みの解明につながる成果です。

研究チームは、これまでほとんど分かっていなかった昆虫ポックスウイルスの全遺伝情報を解析したところ、その遺伝情報とは別にトランスポゾンに似たウイルスの配列を見つけました。

*1) 昆虫ポックスウイルス:昆虫に経口的に感染する病原性のウイルスで、チョウ、コガネムシ、蚊、ハチ、バッタなど種々の昆虫から記録されている。感染は慢性的で、感染した昆虫の発育期間は著しく延長する。感染した場合の死亡率は高い。

*2) トランスポゾン:生物の遺伝情報が記録されている核酸の鎖上を移動できる遺伝因子。その移動によって、生物の遺伝情報に新たな変異をもたらし、遺伝的多様性を創出する。我々ヒトでは、約40%の遺伝情報がトランスポゾン由来であることが知られており、生物の遺伝情報の多くの割合を占める。

本研究は、オックスフォード大学出版Virus Evolutionにおいて2024年7月に公開されました。)

図:ハマキガの一種に感染した昆虫ポックスウイルス
図:ハマキガの一種に感染した昆虫ポックスウイルス。
矢印で例示した粒子状の構造物が個々の昆虫ポックスウイルス。μmは1ミリメートルの千分の一。

 

  • 論文名
    Genomic analysis of hyperparasitic viruses associated with entomopoxviruses("昆虫ポックスウイルスのウイルス"のゲノム解析)
  • 著者名(所属)
    Zachary K. Barth・Ian Hicklin(バージニア工科大学)、Julien Thézé(クレルモンオーベルニュ大学)、高務 淳(森林昆虫研究領域)、仲井 まどか(東京農工大学)、Elisabeth A. Herniou(ツール大学)、Anne M. Brown・Frank O. Aylward(バージニア工科大学)
  • 掲載誌
    Virus Evolution 10(1):veae051、Oxford University Press、2024年7月 DOI:10.1093/ve/veae051(外部サイトへリンク)
  • 研究推進責任者
    研究ディレクター 服部 力
  • 研究担当者
    森林昆虫研究領域 高務 淳

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