研究紹介 > 研究成果 > 研究成果 2024年紹介分 > カツラ集団の遺伝的多様性への集団外の花粉親の貢献
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掲載日:2024年11月28日
渓畔林カツラ*1) 集団*2) で採取した種子について、花粉親由来の遺伝子を調べた結果、集団外からの花粉散布は、各種子親と交配する花粉親の多様性*3) を高め、また集団内とは異なる組成の遺伝子群を導入することで、各種子親が受け取る花粉群の遺伝的多様性が高まることが分かりました。これらのことから、長距離にわたって分布する渓畔林風媒樹種(風で花粉を運ぶ樹種)集団の遺伝的多様性保全のためには、その周囲の緩衝帯に生育する雄個体も遺伝子供給源として保全することが重要だということが分かりました。
カツラなど長距離花粉散布樹種では、集団内の各種子親は集団外に生育する多数の花粉親それぞれから低頻度で花粉を受け取ることで次世代の遺伝的多様性を高める可能性が考えられますが、このプロセスは詳細には分かっていません。本研究では、集団遺伝学的手法を用いてこのプロセスを検証しました。
全花粉散布の平均距離は1,235m、集団外からの花粉の受粉で種子が生産される確率は37.9%と推定され、集団外からの長距離花粉散布の貢献が示されました。
*1) 日本の渓畔林の主要樹種。雌雄があり、花粉は風で運ばれる。
*2) 本研究では、沢沿いの幅200-300m、長さ3,200m(面積約80ha)の範囲に互いに密集して分布する成木の集まり。集団内の繁殖個体数は281(雄131個体、雌150個体)。
*3) 「有効な花粉親数」という指数で評価した。この指数は、各母樹がより多数の花粉親とより均等な頻度で交配した場合、高くなる。
(本研究は、Tree Genetics & Genomesにおいて2024年6月に公開されました。)
写真:調査地(北海道富良野市 東京大学北海道演習林)の状況(a)およびカツラ(b)。
図:推定されたカツラ集団における受粉のイメージ。
花粉は長距離にわたって散布されるものの、集団内の種子親は近距離に位置する雄個体から高頻度に受粉していた。一方、それらの各種子親は集団外の多数の花粉親からそれぞれ低頻度で受粉していた。
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