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更新日:2010年7月1日

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自然探訪2009年5月 アサギマダラの幼虫

アサギマダラ(Parantica sita niphonica Moore)の幼虫

アサギマダラは日本の南西部、中国南部から西北ヒマラヤにかけて分布し、成虫はその浅葱色と栗色の翅の美しい斑紋とともに、長距離を移動することが有名です。南西諸島では冬でも卵から成虫まで全てのステージが見られ、決まった越冬態はありません。熱帯に種数の多いマダラチョウ科は本来南国のチョウですが、アサギマダラはその中でも温帯で越冬できる耐寒性の強い種で、九州以北では非休眠の1~3齢幼虫または卵で越冬します。越冬できる北限は東京付近までで、これは冬でも利用できる常緑の食草であるキジョランの北限に一致します。夏世代の幼虫はカモメヅル、オオカモメヅル、コバノカモメヅル、イケマなどの落葉生のガガイモ科植物も利用しています。幼虫はなかなか派手な姿で、東京以南の低山の林では新緑の頃、キジョランの葉に丸い孔をあけたような独特の食痕を残しながら成長しているのが見られます。このような食痕ができるのは、まず円形に噛み傷を付けてから、その中を食べるためですが、このような面倒なことをするのは、ガガイモ科植物が持つアルカロイド系の防御物質の通り道を噛み傷によって遮断し、食べるべき場所を隔離してから食べ始めるためです。このような有毒物質を遮断する噛み傷を付けることをトレンチングといいます。トレンチングはウリ科の葉をたべるウリハムシやトホシテントウなど、系統的に離れた分類群に見られ、何度も独立に進化した現象であることがわかります。4~5齢に育った幼虫は葉の基部に噛み傷をつけて1枚の葉をしおらせて丸ごと食べるようになります。

 

写真1アサギマダラの幼虫
写真1

写真2アサギマダラの食痕
写真2

写真3トレンチング
写真3 : トレンチング

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