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更新日:2010年11月1日

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自然探訪2010年11月 枯葉がねぐらーコテングコウモリ

コテングコウモリ(Murina ussuriensis

世界には約1200種のコウモリがいます。哺乳類は約6000種とされますから、その約5分の1がコウモリということになります。哺乳類の中では唯一、翼を持ち、自由に飛翔できます。熱帯地方から北極圏まで幅広く分布し、その暮らしぶりもさまざまです。ここでは、コテングコウモリとその北国での暮らしぶりについて紹介します。

コテングコウモリは、体重5 - 6 gの小さなコウモリです。軍手の指の中にすっぽり収まります。密生した長い体毛で全身覆われているのが特徴です。色もその明るい茶褐色が特徴的で容易にコテングコウモリだとわかります。森林の中で主に虫を食べて暮らしています。

春から秋にかけてコテングコウモリは主に枯葉をねぐらとして使っています。そう、か・れ・は、です。草も木も利用します。北海道支所の羊ヶ丘実験林内で調べたところ、使われた枯葉は、草では、ヤマブドウ、オオイタドリ、フキなど、木では、ハリギリ、ホオノキなどでした。大きめの葉が枯れて丸まった部分に入っていることが多いのですが、枝ごと枯れて束になったミズナラやハリギリの葉の中にいたこともあります(写真1)。

面白いことに、出産・子育ての時期(6 - 7月)には雌雄の間でねぐらをとる高さに違いが見られます。オスはもっぱら樹冠より下、地上1 - 2 mの高さにねぐらをとることが多いのに対して、メスは樹冠部を利用します。樹冠部にいる場合、枯葉の中にいるかどうか確認できないことも多いのですが、これまで確認された限りではすべて枯れ葉でした(写真2、3)。

秋になると、メスも次第に樹冠より下にねぐらをとるようになります。さらに秋も深まると枯葉を離れて樹洞に入り、ほとんど動かなくなるようです。

コテングコウモリは春、残雪上で時々発見されています。分析してみたところ、彼らは雪の中で越冬している可能性が非常に高いことがわかりました。雪中での越冬が実際に確認されれば、コウモリだけでなく、おそらく哺乳類でも世界初の事例になります。

枯葉の少ない春先にどこにねぐらをとっているか、まだよく分かっていません。これから調べたいと思っています。

 

 


コテングコウモリ1
写真1 ハリギリの枯葉の中のコテングコウモリ
葉の下に頭と翼の関節部が見えます。チューブ状の鼻が分かります。葉の上には、装着した電波発信機のアンテナが上に伸びています。


コテングコウモリ2
写真2 コテングコウモリがねぐらをとる樹冠部の枯葉
電波発信機の細いアンテナが右に見えます


コテングコウモリ3
写真3 写真2のズームアウト
どの枯葉かわかりますか。高さは10.4m。
(写真をクリックすると拡大写真になります)

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