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更新日:2013年9月2日

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自然探訪2013年9月 夏の雲 秋の空

夏の雲 秋の空

暑い夏でした。連日の猛暑と熱中症多発、全国各地での渇水の報道が毎日のようにテレビを賑わせた一方で、気象の極端現象として記録的豪雨や突風等の発生と痛ましい被害の報告も多い夏でした。

森林は水資源の涵養や国土の保全など、国民の安全・安心な暮らしに必要な多面的機能を持っています。本来であれば森林の育まれた山地流域が緑のダムとして良質で持続的な水資源を供給するはずですが、極端現象としての寡雨、つまり降水の地理的・季節的偏りがあまりに大きく、この夏は水資源の確保が難しかったのでしょう。一方で経験したことがないような多雨もあり、想定された森林の国土保全機能を越えて被害が生じたこともあったでしょう。

さて、この極めて重要であり時には厄介な雨ですが、入道雲とも呼ばれる雄大積雲や積乱雲からもたらされることはご存知でしょう。森林総合研究所のある茨城県や利根川の流域では、これらの雲のことを坂東太郎と呼ぶこともあるそうです。もちろん利根川も、坂東太郎の俗称で親しまれていますね。もしかすると利根川のみならず、大切な雨をもたらす雲を、親しみを込めて呼ぶようになったのかもしれません。ちなみに九州の筑後川、筑紫二郎と呼ばれますが、筑後川一帯に発生する雄大積雲も同じ名前で呼ばれているそうです。

写真1~3は森林総合研究所から撮影したこの夏の坂東太郎です。入道雲である雄大積雲から積乱雲に発達していく過程にあります。雲の下では激しい雨が降り雷鳴が轟いていることでしょう。このような坂東太郎が水源地である森林地帯にまんべんなく発生してくれるといいな、と水土保全や森林気象の研究に携わる研究者たちは渇水期の夏の午後になると降水レーダーの画像を観ながら願うのです。

気象庁の季節予報によれば、この9月も気温はやや高めに推移するそうです。残暑も早く去ってほしいなぁと見上げた空に巻雲が現れるようになりました。写真4は森林総合研究所赤沼実験林で8月下旬に撮影された巻雲です。中緯度地帯では秋や春に出現するので、青く澄んだ空に巻雲をご覧になると秋を実感される方々も多いのではないでしょうか。

雲にも学術名があり、巻雲はCirrus(シーラス)と呼ばれます。日本でも「しらす雲」と呼ばれるのは、ここに由来しているようです。巻雲がたくさん出現すると、数日内にお天気が崩れて雨が降るという気象伝承があります。巻雲の俗称には「雨知らす」というのもあります。適度に雨が降り、秋の実りが豊かになるように、巻雲の出現が待たれるところです。日照りに不作なし、という農業伝承も味方してほしい秋です。

写真1:雄大積雲 森林総研つくば
写真1:雄大積雲 森林総研つくば

写真2:積乱雲 森林総研つくば
写真2:積乱雲 森林総研つくば

写真3:積乱雲 森林総研つくば
写真3:積乱雲 森林総研つくば

写真4:巻雲 森林総研赤沼実験林
写真4:巻雲 森林総研赤沼実験林

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