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更新日:2014年5月1日

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自然探訪2014年5月 桜とともに顔を出すスギカミキリの話

桜とともに顔を出すスギカミキリの話

関東ではソメイヨシノが咲き終わりました。森林の害虫を研究している人が、ソメイヨシノと聞くと思いだすのがスギカミキリ(図1)です。スギカミキリはスギやヒノキを加害するカミキリムシで、桜の時期になると木の幹に平べったい穴を開けて成虫が顔を出します(図2)。材質を劣化させる害虫なので、林業家には忌み嫌われていますが、この虫も虫なりに懸命に生きています。

まだ、春の早いこの時期に姿を見せるカミキリムシは少ないのですが、なぜスギカミキリはこんなに早くから活動するのでしょうか。スギカミキリの幼虫は、樹皮のすぐ下の形成層というみずみずしいところを食べて大きくなります。ここは木の栄養の通り道であり、木の幹が育っていくところでもあるので、幹の中ではおいしい質の良い餌のところです。しかし、スギカミキリにとって困ったことに、ここは木のヤニが出てくるところでもあります。木は傷つけられると、そこを守るために樹脂を出します。このべたべたにさわると、幼虫は死んでしまいます。春から季節が進むとスギの木がどんどん活発になり、ヤニもよく出すようになります。スギカミキリは春の早くに出てきて卵を産んで、スギの木がまだぼんやりしている間に幼虫が樹皮下にもぐって成長を終えて、もっと内側に作る蛹室ようしつに逃げ込むのだと考えられています。今頃、つくばのあたりのスギカミキリの幼虫は、大急ぎで食べ進んでいることでしょう。

この話は昨年お亡くなりになった名古屋大学の柴田叡弌しばたえいいち先生に教えていただきました。


図1 スギカミキリ成虫(雄)
図1 スギカミキリ成虫(雄)


図2 スギの幹に穴をあけて、顔を出しているスギカミキリ
図2 スギの幹に穴をあけて、顔を出しているスギカミキリ


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