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更新日:2018年7月2日

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自然探訪2018年7月 時には、山道、自転車で。

時には、山道、自転車で。

今回は、自転車乗りのワタクシと、筑波の山道・田舎道、ゆっくり探索してみましょう。

まだ薄暗いうち。日の出の少し前に出発するのが常です。早朝には行きかう車があまりないので、高速で山道を走行する走り屋を気にする必要もなく、安全に楽しむことができます。

麓から峠へ続く山道はつづら折りが続きます。自転車のスピードは、徒歩より速くバイク以下。周囲の様子をうかがいつつ、のんびり距離を稼ぐことができる適度な速度の乗り物です。

さて、スピードが緩む急な登り坂に差し掛かりました。額には汗がにじみ出すころですが、疲れた顔は見せないで、何かを見つけたふりして足を止め、上がった息を整えましょう。緑の木々の合間から、どんな小さい気づきが得られるでしょうか。

最初に気づくのは、姿も美しいソウシチョウのさえずりかもしれません(写真1)。しかしこの鳥本来は、日本にいない外来種(こちらも是非ご覧ください: https://www.ffpri.affrc.go.jp/snap/2014/11-soushichou.html)。「外来生物法」で「特定外来生物」に指定され、「日本の侵略的外来種ワースト100」の1種にも挙げられています。

そろそろ、ふくらはぎに疲れを感じる頃ですね。ちょっと立ち止まってみましょう。

7月頃には日当たりの良い場所で黄色い実が目立つでしょう。モミジイチゴの実です。一粒とって口の中に入れると甘い香りが広がり、疲れが飛びます。秋にはいろいろな山の幸が山いっぱいに実ります。ミツバアケビやクリを両手いっぱい収穫できることもあります(写真2)。

道路わきなど、地面が荒れている場所は発見できたでしょうか。ときに、超小型ブルドーザーで土の表面を削ったようになっています。イノシシによる掘り起こしです(写真3)。彼らのお目当ては、地中に隠れる動植物。ミミズ、根茎、タケノコなどです。臆病者のイノシシにはなかなかお目にかかれないので、実感がわかないかもしれませんが、彼らの生息域・個体数ともに増加しています。筑波山周辺地域では、十数年前からイノシシによる農林作物被害が深刻化しています。被害を軽減するために、捕獲による対策に加え侵入を防止する柵の整備が進められるとのことです。

ようやく峠に到着です。流れ落ちる汗を拭き、一息つきましたか?最後に、講談風にニホンジカ(以下、シカ)のお話をして、麓まで一気に下りましょう。

「ご存知ですか、みなさんは?茨城県。本州唯一のシカ無し県。シカしシカ無しもう終わり?お隣、栃木八溝地方。かつてはこちらもシカ無しで。シカし分布が拡大し、シカの捕獲がありました。もシカして、数年後には筑波でも、シカが姿を見せるかも。もしもこんな落とし物、見つけちゃったら大ラッキー(写真4)。とても大事な情報です。是非是非、連絡、ご一報、頂ければ幸いです。」

 

(野生動物研究領域 永田 純子)

写真1:ソウシチョウ
写真1:ソウシチョウ(撮影 野生動物研究領域 東條 一史)

写真2:ミツバアケビの実
写真2:ミツバアケビの実

写真3:イノシシによる掘り起こし
写真3:イノシシによる掘り起こし

写真4:ニホンジカの落とし物
写真4:ニホンジカの落とし物(栃木県日光市)(ノウサギの糞と似ているが、ノウサギではほぼ球形であるのに対して、ニホンジカでは俵形(円柱形))

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