更新日:2020年10月1日

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自然探訪2020年10月 ササ

みなさんは、ササと聞いて何を思い浮かべるでしょうか。生い茂ったササ原を想像する方もいれば、焼き魚の“つま”として添えられたササ、あるいは「ササの葉さらさら(たなばたさま)」の歌が思い浮かぶ方もいるかもしれません。いずれにせよ、ササは日本人にとって比較的身近な植物と言えるでしょう。それもそのはず、ササは沖縄を除いた全国に分布し、国土の約18.5%(700万ヘクタール)に生えていると言われています。

そんなササですが、他の植物にはあまり見られないユニークな側面を持っています。例えば、ササは長寿命一回繁殖性、つまり長い年月(数十年から120年程度)をかけて成長した後に、たった一度だけ花を咲かせて枯れてしまうという、なんとも堅忍果決な生態の持ち主です(ただし例外もあります)。また、一斉開花といって、多数の株が広域にわたって同時に開花・枯死するという現象を見せることもあります。興味深いことに、同じ株を遠く離れた異なる環境に移植しても、それらが同時に開花した例が報告されています。遺伝的に開花するタイミングがある程度決まっているのかもしれません。

林業従事者や生物多様性維持の観点からすれば、競争能力の高いササは、苗木の成長を阻害したり他の植物を駆逐したりする厄介者かもしれません。鬱閉した森林内では林床に薄く生えている程度のササも(写真1)、ひとたび光が当たるようになると、一気に繁茂して土地を覆いつくしてしまうこともあります(写真2)。一方で、ササの落ち葉や根っこは、土壌浸食や土壌中の栄養の流出を防ぐという、ポジティブな側面も持っています。

最後に、ササにまつわる豆知識をご紹介しましょう。寒冷地では、ササ(クマイザサやチシマザサ)の背丈は冬の積雪深とおおよそ一致します。したがって、例えば夏にハイキングをしていて高さ1mのササが生えているのを見かけたら、その場所では冬に約1m、またはそれ以上の雪が積もると予想できます。これは、外気温が氷点下の時でも、雪中の温度は0℃前後に保たれるためです。比較的暖かい「雪の布団」の中では、ササの冬芽が枯れずに越冬できるのです。ササを今度見かけたときは、寒い冬を何度も耐え抜き、生涯に一度の開花に向けて力を蓄えているササの生き様を想像してみてはいかがでしょう。

(北海道支所 辰巳 晋一)

 写真1:林床のササ
写真1:林床のササ。同じ森の中でも、樹木が多く林床が暗い場所(写真中央)ではササの密度が薄く、明るい場所(手前や奥)では密度が高い傾向があります。(写真:及川 希)

 写真2:伐採跡地のササ
写真2:伐採跡地のササ。一度このようにササが繁茂すると、機械を使って除去したり、一斉開花が起きたりしない限り、新たな樹木や他の植物の更新は難しくなります。人の背丈ほどもあるササ原では、野外調査も大変!(写真:辰巳 晋一)

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