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更新日:2019年12月2日

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今月の自然探訪

センダン

家具や床材の材料には、細くても壊れない強さや、引っかいても傷つきにくい表面の硬さが必要なことから、おもに広葉樹材が利用されています。日本では家具を作るときに使う木材の約8割を海外からの輸入に頼っていますが、海外での資源量の減少や生物多様性を保全するための伐採規制の動きなどから、国内産の広葉樹資源への期待や関心がしだいに高まってきています。

多くの広葉樹はスギやヒノキなどの針葉樹と比べて毎年の成長が遅く、家具材となるには80年以上の期間を要することや、針葉樹と比べて幹の曲がりや幹や枝分かれが発生しやすいなど、通直な木材の生産が難しいことが課題となっています。こうした中、成長が早く、植栽してから20~30年で木材としての利用が可能な早生樹種として、センダンが注目されています。

センダン(Melia azedarach var. subtripinnata Miq.)は、センダン科センダン属の落葉広葉樹で、大きいものは樹高20m、直径1mにも達します(写真1)。元々、日本原産の樹種ではないのですが、古くは「あふち」という呼び名で万葉集にも登場する(写真2)ことから、かなり古い時代に渡来したと考えられます。現在では、南西諸島、九州、四国、小笠原諸島、本州の伊豆半島以西の太平洋沿岸に広く自生しています。ちなみに、「栴檀(せんだん)は双葉(ふたば)より芳し(かんばし)」ということわざがありますが、ここで出てくる栴檀は、センダンではなく香木として用いられるビャクダンを指しています。

センダンの心材は赤みを帯びた黄褐色で、ケヤキに似た明瞭な木目を持ちます。国内有数の家具産地である福岡県大川市の協同組合福岡・大川家具工業会では、センダン独特の木目を活かした家具の開発を2017年から積極的に進めています(写真3)。また、センダンは通常、枝を四方に広げた傘型の樹形となりますが、先端の芽だけを残し、それ以外の側芽を取り除く「芽かき」によって通直な幹を仕立てる技術が熊本県で確立され、各地で試験的にセンダンが植栽されています。

センダンは水分が豊富で水はけが良く、肥沃な土地を好むことから、川のほとりや田んぼのあぜ道などに生育しているのをよく見かけます。その点から、センダンを植栽する土地として、荒廃農地や耕作放棄地が適していると考えられています。実際、2016年4月に兵庫県宍粟市の荒廃農地を正式な手続きにより転用し植栽されたセンダンは、2年半後に樹高5~6mに成長していました(写真4)。センダンのような早生樹種は、生育に適した環境に植えてこそ早い成長が期待できます。植栽には土壌や日当たりなどの検討が必要ですが、少なくとも我が国における植栽樹種の一つとして、センダンが新たな選択肢となる日も近いかもしれません。

(木材加工・特性研究領域 杉山 真樹)

写真1 森林総研構内のセンダン
写真1 森林総研構内のセンダン(2019年7月撮影)

写真2 センダンの花(初夏の花として万葉集に和歌が掲載)
写真2 センダンの花(初夏の花として万葉集に和歌が掲載 2019年5月撮影)

写真3 センダン材のシステムキッチン
写真3 OKAWA The Future Furnitute 2019(2019年10月9~10日大川産業会館)
に出展されたセンダン材のシステムキッチン

写真4 兵庫県宍粟市の荒廃農地に試験植栽されたセンダン
写真4 兵庫県宍粟市で荒廃農地を正式に転用したセンダン植栽地(2018年10月撮影)

 

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