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更新日:2023年5月31日

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育種って何? 望まれる個性を持った木を求めて①

 ここは「東北育種場」。「東北」で「育種」を行っている「場」です(【写真-1】、【写真-2】)。
 育種、すなわち品種改良というやつですね。

 農業の分野ではお米や野菜などの農産物の品種改良が進み、美味しくて、形が良くて、病気や虫に強くて、等々様々な特徴を持った品種が開発されています。スーパーに行けば自分の好みに合った銘柄の農産物を選ぶことができる、まさに地道な育種(=品種改良)の成果ですね。樹木も育種をしています。リンゴやモモ、サクランボなど果樹であれば、有名な品種が身近にあるので、あ~育種しているんだな、と実感できます。
 実は、山に植えている木、すなわち林業に関わる木(以後、「林木」と言うことにします。)であるスギやヒノキ、カラマツなども育種をしているんです。
 林木の育種? どのような品種改良なのかいまいちイメージが湧かないと思いますが、「成長が早い」、「真っ直ぐ成長する」、「材質が良い」、「病害虫に強い」などを求めて育種しているのです。最近では「花粉が少ない、出ないスギ」や「マツ枯れに強い」などの開発に注目が集まっています。林木育種の一番の特徴は、なんといっても林木は生育期間が長い!ことでしょうか。農産物であれば品種改良した結果が翌年など早くに分かり、すぐに次の対応ができますが、林木の場合、改良の結果が分かるまで長い時間が必要となります。
 このため、どのような目的で育種するのか、今後どの樹種に力を入れて育種するのか、林業・森林の未来を予測しつつ判断していくことは難しい、ことです。
 例えば、「スギ」、育種を進めていく上で、昔は花粉のつく量が多いか少ないかということが大問題になるとは思いもよらなかったのですが、今は花粉が少ない、ということがとても重要。
 例えば、「カラマツ」、昔は木材にするとねじれてしまうことから使い道が限られると敬遠されがちだったのが、最近はねじれに対応できる技術が出来たことから人気急上昇。
 未来がどうなっていくのか、思いを巡らすが、難しい。

 それでも先人達は、より品質の良い木、林業的に優れた木を作り出そうと、林木育種は長い歴史を積み重ねてきました。それは、昔々、およそ70年前に日本全国の山で成長や樹形の良い木を探し、選び出したのが始まりです。この時、全国でスギやヒノキ、カラマツなど約9,000本が選ばれました。日本代表ですね(【図-1】の①)。このうち東北代表はスギ約700本、カラマツ約30本、アカマツとクロマツで約260本、そしてブナが約50本の精鋭達です。これらは第一世代精英樹と呼ばれます(【図-1】の②)。
 この第一世代精英樹、全国各地の“山で一番良い木”として選ばれてきたものですが、もしかするとたまたま育っていた場所が良い環境だったので大きくなっていたのかも、との疑念も拭えません。そこでこれら精英樹を集め各地に検定林を作って成長などを再確認します(“大事なことは思いやりの心「検定林調査」”を参照)(【図-1】の③)。さらに、この中から特に成長の良い木など、目的に合った木を選び、この木を両親として、人工交配(【図-1】の④)を行い次の世代を育てます。
 そして、再度、検定林をつくりその中でより優れた木を選抜し、育てていったのがエリートツリーと呼ばれる第二世代精英樹(【図-1】の⑤)です。“エリートツリー”、読んで字のごとく成長や材質などが優れた、選ばれたエリートな木です。
 林木育種は、この「選抜→交配→検定」を繰り返しながら世代を進めていくのです。現在は第二世代、そして第三世代精英樹の開発を進めています。次回は、この繰り返しの中の交配、「人工交配」について見ていきましょう。

 

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     【写真-1】「東北育種場」と岩手山
     バックに岩手山を望む、いつもの風景

      【写真-2】上空からの「東北育種場」
事務所棟、研究棟、苗畑、温室、ビニールハウス等々。この他に遺伝資源や育種素材の保存林、試験林など合計約74haの敷地面積がある。

 

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