(研究資料)

人工林の複層林施業に関する研究(V)

庇陰下における樹品種の生態的特性(2)

下木の光環境と生長

複層林施業研究班

   要旨

 複層林における林内更新法を確立する基礎として,林内下木の光環境と生長に関する多くの資 料を集積した。複層林の下木としてのスギ稚樹の年間伸長量は,林内相対照度と関係し,とくに林内相対 照度が約20%以下で高い相関が認められ,稚樹の伸長量から林内の明るさを推定できることが,ヒズモ スギ,サンブスギの調査事例で認められた。しかし,アヤスギ,ヤナセスギさらにヒノキなどの下木につ いての調査事例からみると,下木の伸長量と林内相対照度との関係は,樹種,品種・系統,地域によって 異なると考えられた。また,間伐方法や施肥量を変えたスギ壮齢林にスギ,ヒノキの下木植栽を行った試 験から,上木の本数密度,樹高,直径,閉鎖度,収量比数など林分構成因子と下木の生長および林内相対 照度との関係を解析した結果,これらの林分構成因子の重回帰式によって下木の生長を精度よく推定でき る見通しを得た。
 低質広葉樹林の林種転換のためのスギ,ヒノキの下木植栽試験結果でみると,植栽後7年経過した下木 の樹高生長は,裸地植栽の場合に比べ,スギ,ヒノキとも相対照度5〜10%では約1/7,20〜30%では約 1/3〜1/2であり,形状比は低照度ほど大きくなる。さらに,カラマツ,アカマツ林内での7生長期にわ たるスギ下木植栽試験では,母樹系統によって下木生長がかなり異なることが明らかにされた。  庇陰下の植栽苗の枯損には,光不足だけでなく苗木の光前歴,移植のショック,根ぐされなどの要因も 関与した生理的障害(陰湿害と仮称)が考えられ,スギよりもヒノキに多くみられる。現地試験の結果, 梅雨時の異常多雨,湿潤立地,低照度などが多発要因と考えられ,回避のためには15%以上に相対照度 を維持する必要があり,そのため群状間伐が有効であった。

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