(研究資料)

人工林の複層林施業に関する研究(W)

庇陰下における雑草木の再生量と下刈の要否

複層林施業研究班

   要旨

 複層林施業の効果の一つとして,更新作業での地ごしらえ,下刈りの 省力化があげられる。その効果を具体的に把握するため,林内更新の際の下刈りとの関連で,樹種,林 分構造,植生タイプなどのちがう林分について,林内庇陰下での雑草木の再生の実態を調査した。
 スギ老齢林(74年生;樹高約30m)で3段階に間伐して下木(スギ)を植栽した試験では,林床植生の構 造,種類組成,優占種の遷移には林内光環境と密接な関係が認められ,林床植生の再生は皆伐区より 間伐区でおそく,間伐が弱い区ほどおそかった。皆伐区では植栽後2年目より下刈りを必要としたが,強 度間伐区(間伐後収量比数0.50)では3年目まで,中庸度間伐区(収量比数0.73)で4年目まで,弱度間伐 区(収量比数0.80)で5年目まで下刈りが不要であった。ヒノキ壮齢林および広葉樹林の事例では,林内 相対照度2%以下では林床植生は殆ど発生せず,5〜10%で植生が発生するが,下刈の必要は全くない。 20〜30%となると植生はかなり増加し,40〜50%では陽生の雑草木が繁茂して下刈りが必要となるが, 下刈り作業の労力はかなり軽減できることが認められた。ヒノキ老齢林で強度間伐(本数率70%,相対照 度60〜70%)して,ヒノキの下木植栽を行った試験事例でも,下刈り省略はできなかったが,雑草木の組 成,再生量からみて作業労力は軽減できると考えられた。アカマツ林(62年生)の間伐後にヒノキを下木 植栽した試験では,外分が高齢過密で前生雑草木が乏しい場合,また間伐木の搬出による地表撹乱が あった場合などでは,林内照度が高くても雑草木の再生はかなりおくれることが認められた。

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