地球上の陸地の炭素量の推定によると、土壌中には植物体中の3〜4倍の炭素が蓄積しており、炭素貯蔵庫として重要な機能を持っている[1]。
日本の森林土壌に関しては、過去に行われた林野土壌調査報告や適地適木調査などの資料を基に土壌タイプごとの炭素蓄積量がまとめられている[2]。この報告によれば、泥炭土、黒色土群、ポドゾル群に炭素が多く蓄積されており、未熟土や赤黄色土群の土壌の炭素蓄積が少ないことが明らかになっている(図1)。
しかし、報告の元になった森林土壌の調査は造林が盛んであった1950-1970年代に主に行われたものである。土壌炭素は土地利用の変化、樹種の違いや森林伐採、地球の温暖化により変化することから、国連気候変動枠組み条約や京都議定書など国際条約に対応するために、最新の土壌炭素量を調査することが必要となった。
このような背景から、林野庁の委託事業として、2006-2010年度にかけて第1期の土壌インベントリ調査プロジェクトが実施された。森林総合研究所は、都道府県、民間調査団体等とともに全国の森林土壌のリター、枯死木、土壌中の炭素量を統一された方法で調査し、インベントリ(目録)を構築した。その結果、我が国の森林土壌の鉱質土壌深さ0〜30cmにおける土壌炭素蓄積量は、7kg/u程度であることが明らかになった[3]。さらに、2011-2015年度においては、枯死木の測定項目を増やし精度を高め、リター、枯死木、土壌中の炭素量変化を検出するための調査を行った。現在は、地域別の炭素蓄積の違いや地形や植生の影響など、詳細な解析をおこなっている。
土壌炭素蓄積変化量は現在蓄積している炭素量に比べて非常に小さいため、検出するには比較的長期間の観測間隔を置く必要がある。そのため、現在の設計では土壌については10年に1回の調査間隔になるように設計されている。一方、比較的短期間で変化すると考えられる枯死木・リターについては、5年間隔の調査となるように設計されている。第三期では、2006-2010年度に調査された地点のうち、2011-2015年度に調査されなかった地点を対象に土壌炭素量を調査し、この10年間の変化を明らかにすることを目的としている。
これらの調査結果を元に、国連の気候変動枠組条約への報告に引き続き対応するとともに、2015年に国際合意された2020年以降の地球温暖化対策を定めたパリ協定への対応も視野に入れたデータを蓄積することを企図している。