お問い合わせ
スギ林の背景写真
スギ林の背景写真

世界初、 木から造る 新しいお酒

長い人類の歴史の中で、
初めて木を原料にお酒ができるようになりました。
長い時を経て刻まれてきた年輪の木材を原料に樹種ごとに特徴的な風味が醸し出されます。

ABOUT

木そのものを
発酵させて造る
新しいお酒

森林総合研究所は、木材の新しい加工技術を開発し、人類史上初めて木を原料にお酒を造る技術を開発しました。
人類におけるお酒の歴史は古く、人類最古の醸造跡として1万3千年前の醸造跡が報告されています*1。その後の長いお酒の歴史の中でワインやビール、日本酒などの醸造酒、ブランデーやウイスキー、焼酎などの蒸留酒が造られてきました。このように長いお酒の歴史の中で、「木の酒」は2017年に初めて試験製造された、世界初のお酒です。

*1:Li Liu et al., Journal of Archaeological Science:
Reports, 21: 783-793, 2018

「木の酒」製造イメージのイラスト
「木の酒」の瓶が並んだ写真
「木の酒」の瓶が並んだ写真

プロモーション動画(6分ver.)

「木の酒」の瓶を手で握る写真
「木の酒」の瓶を手で握る写真

プロモーション動画(30秒ver.)

FEATURE

01 「木の酒」は想像よりも
たくさんできる?!

例えばスギを原料としてアルコール35%の蒸留酒を造る場合、ウイスキーボトル(750mL)を造るために必要な木材は約2kg(乾燥重量)です。現在日本の人工林に多い樹齢50-60年のスギの木1本を原料にした場合は150本以上できる計算となります。

「木の酒」の瓶の写真

02 樹種ごとに異なる風味が
醸し出される

スギは樽酒のような本当にスギらしい風味があります。シラカバはフルーティーで白ワインや青リンゴのような風味が感じられます。ミズナラは甘く芳醇な風味がありウイスキーを連想させます。クロモジは爽やかな柑橘系の華やかな風味があります。このように樹種ごとに全く異なる風味が生み出されます。

「木の酒」の瓶が並んだ写真

03 長い時を経て
育ってきた木が
全身に行き渡る
新しい体験!

原料の丸太には必ず年輪が刻まれています。年輪が100本あったとするとその中心には100年前にその木が作った木材があり、そこから伐採した年まで毎年作られ続けてきた木材が年輪として刻まれています。「木の酒」はこの全ての年の木材からセルロースをむき出しにして、これをブドウ糖に分解し、アルコール発酵します。できたお酒には必ず100年前のセルロースからできたアルコールが含まれるだけではなく、100年間全ての年のセルロースからのアルコールが含まれているのです。「木の酒」は100年間成長し続けてきた木が飲んだ人の全身に行き渡るという新しい体験をもたらしてくれるのです。

年輪の写真

04 地域ごとの
ストーリーとともに
「木の酒」を楽しむ

木は日本全国どこにでもある身近な存在です。そしてその大部分は山で育っています。その地域のあの山で育ったこの木をそこの湧水で仕込むといった地域ごとのストーリーを含む「木の酒」は、その地域の人にとって特別なお酒となるだけでなく、訪れた観光客のお土産としても魅力的でしょう。

お猪口の写真

TECHNOLOGY

顕微鏡の写真

01 木材の主要成分への
理解

木材の主要成分はセルロース・ヘミセルロース・リグニンであり、これら3つの成分が木材の90%以上を構成します。そしてこれら3つの成分は互いに結合して強固な細胞壁という構造を作っています。セルロース・ヘミセルロースは酵素や微生物によって分解されやすい成分ですが、難分解性のリグニンがこれらの成分を覆って硬い細胞壁を形成しているため、木材を直接酵素や微生物で分解することは困難です。逆に言えば、この強固な細胞壁構造のおかげで、木材は100年以上も腐食しにくい耐久性のある建築材として利用価値が高いのです。

ビーズミル機の写真

02 新技術、湿式ミリング処理

木材の細胞壁の厚さは一般的に2〜4 μm(1μm=1/1000mm)と非常に薄い構造であり、この薄い細胞壁構造が密集して硬い木材を作り出しています。我々は木材の細胞壁を砕く新しい前処理技術「湿式ミリング処理」を開発しました。これはカラーインクの製造現場で広く使われているビーズミル装置を応用して、木材を水中でビーズと衝突させ微粉砕する技術です。この技術により、それまでは困難だった1μm以下にまで木材を微粉砕することが可能となりました。

スラリーの写真

03 ブドウ糖に分解、
アルコールへ

湿式ミリング処理によって細胞壁が砕かれ、中にあるセルロースの大部分が露出します。露出したセルロースは水を吸って膨らむ性質があるため、木材は粘度の高いクリーム状になります。湿式ミリング処理によって露出したセルロースは市販の酵素(セルラーゼ)によりブドウ糖に分解できること、そのブドウ糖は酵母によってアルコール発酵できることを明らかにしました。

「木の酒」の瓶の写真

04 「木の酒」の試験製造を開始

木材を原料にしたアルコール製造が可能なことが分かりました。そこで、森林総合研究所では酒造免許を取得し木を原料にした世界初の「木の酒」の試験製造を開始しました。

※「木の酒」の製造方法の詳細はページ下部の論文をご覧ください。

STORY

2010

顕微鏡の写真

新技術
「湿式ミリング処理」
の開発

腐敗しにくい木材が土壌中で微生物に分解されるプロセスを明らかにするために、木材を1/1000mm以下に微粉砕 する「湿式ミリング処理」の開発に成功。何年もかけて徐々に分解される木材が数日でカビに覆われるようになる。これを見て木材を「発酵」させてなにか製品を造ることができるのでは、と思いつく。

2012-2016

メタン発酵槽の写真

木材の
メタン発酵技術の開発

湿式ミリング処理とメタン発酵を組み合わせて、木材からメタンガス燃料を製造するプロセスの開発を開始。木材を原料に新しい再生可能エネルギーの生産技術開発を目指して福島県南相馬市小高区で2013-2014にかけて実証試験を行った。メタン発酵の実証試験を進めながら福島の美味しい日本酒を飲むうちに木をアルコール発酵させればお酒になるのでは、と考え始める。

2016-2017

お猪口の写真

世界初の
「木のお酒」を造るため
何度も相談を

お酒を製造するためには試験研究であっても酒造免許が必要であるため「木の酒」の試験製造に先立って、税務署へ酒造免許取得について相談を開始。しかし酒造免許は酒税法によって酒類ごとに定められており、木から造られるお酒についてはどの種類にも当てはまらなく酒造免許交付は難しいことが判明。そこで、税務署をはじめとし国税局、国税庁の皆様に木から造られるお酒の製造方法や可能性について説明を重ね、最終的に現行法律の中で酒造免許が交付可能との判断を得る。私どもへの酒造免許交付に尽力いただいた税務署、国税局、国税庁の皆様には大変感謝しております。

2017-2022

「木の酒」の瓶の写真

「木の酒」製造を開始、
安全性試験を行う

人類史上誰も飲んだことのない「木の酒」には安全性に関するデータが何もないため安全性試験が必要であった。そこで酒造免許取得後の2017年から「木の酒」の製造プロセスを整備し、2019年より試験サンプル製造、2020年から2022年にかけて試行錯誤しながらスギ、シラカバ、ミズナラ、クロモジの4樹種から「木の酒」を造り、安全性試験(食品分析、遺伝子突然変異誘発性試験、急性経口毒性試験、反復経口毒性試験など)を行なった。その結果、問題となるデータはなかったことから、2022年より試飲アンケート調査および民間への技術移転を開始した。

2023

「木の酒」研究棟の写真

木質バイオマス
変換新技術研究棟
(通称:木の酒研究棟)
の新設

2023年に森林総合研究所(つくば市)に新たに木質バイオマス変換新技術研究棟(通称:木の酒研究棟)を新設。この研究棟では丸太から「木の蒸留酒」までを一貫製造できる設備を完備。本施設は「木の酒」の研究開発の場だけではなく、「木の酒」の事業化を検討する酒造メーカー様への技術研修の場でもあり、「木の酒」を日本各地へ事業展開を促進する本拠地として動き始めた。

FLOW

「木の酒」の特許実施許諾契約は日本の国産材を原料に日本国内で製造する酒造メーカーのみ契約することができます。
具体的な流れは以下のとおりです。

  • お問い合わせフォームよりお問い合わせ

  • 弊所担当者との打ち合わせ(事業プラン、契約内容等)

  • 契約手続き

    契約後は「木の酒」の製造に関する全ての情報を開示します。
    また森林総合研究所内の「木の酒」の製造設備を使って技術移転研修(1回8日間)を受けることができます。

FAQ

Q「木の酒」はどこで売っていますか?

A森林総合研究所は研究機関のため、製造販売は行いません。そのため森林総研が開発した「木の酒」は現在どこにも売っていません。
「木の酒」が販売されるためには民間の酒造メーカーが製造して販売する必要があります。
現在「木の酒」の事業化に挑戦する酒造メーカー様を絶賛募集中です。

Q必要な酒造免許はどれになりますか?

Aどのような「木の酒」を製造するかで必要な免許が異なりますが以下の酒造免許が想定されます。
スピリッツ、リキュール、単式蒸留焼酎、その他の醸造酒、雑酒

Q商用生産の場合の規模感はどれくらいですか?

A酒造免許には年間最低製造量が定められています。例えばスピリッツ免許で製造する場合は最低6000L/年の「木のスピリッツ」を製造できるだけの製造設備が必要です。

Q上記生産規模での設備コストはどれくらいですか?

A建屋の建設と製造設備一式で約5億円を想定していますが既に建屋や流用可能な装置をお持ちの場合はその分コストダウンが見込まれます。

CONTACT

「木の酒」の研究開発は
生研支援センターの支援を
受けて行なっています。