13:10〜13:40 |
森林のCO2吸収量をタワーではかる |
大谷 義一(気象環境研究領域 気象研究室長) |
地球温暖化防止の国際的な取り組みにおいて,森林生態系のCO2吸収量の把握が重要な課題となっています。しかし,温暖化防止に対する森林の役割を評価するという,社会的・科学的な要請にこたえるだけのデータはまだ十分蓄積されていません。そのため,観測によって森林と大気間のエネルギーやCO2の交換過程に関する理解を深め,モデルの構築やモデルの検証に必要なデータを収集・蓄積する必要があります。このような観測研究は,温暖化防止京都会議以降の社会的要請に対して,科学的な知見を盛り込むためにも欠くことはできません。国際的なフラックス観測ネットワークと連携しつつ森林総合研究所で行っている,森林のCO2吸収量を中心とした観測研究について紹介します。 |
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13:40〜14:10 |
森林の手入れはCO2吸収量にどう影響するか? |
千葉 幸弘(植物生態研究領域 物質生産研究室長) |
人手が加わった人工林と自然状態の天然林とでは,CO2の吸収量に違いがあるのでしょうか。また人工林でも,間伐など手入れが行き届いた人工林と放置されたものとでは,CO2の吸収量は違うのでしょうか。温暖化防止に貢献するための森林管理はどうあるべきかが,今問われています。森林の立木本数や林齢などによって変動する森林の構造や成長量を予測するとともに,森林への炭素蓄積やCO2吸収量が森林の手入れによってどのように変化し得るのか,研究の現状をご紹介します。 |
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14:10〜14:40 |
森林が作る炭素の隠し金庫 −森の土− |
高橋 正通(立地環境研究領域 養分環境研究室長) |
地球上の土壌中の炭素蓄積量は植生による炭素蓄積の4倍にも達すると推定されています。日本でも森林土壌における炭素蓄積量の推定精度の向上を目指し,データベースの整備と全国のマップ化を進めています。また土壌炭素蓄積量は森林施業によって変化します。畑などに新たに植林すると,毎年30〜60g/m2程度の炭素が蓄積することが分かりました。伐採後再植林した場合は,利用されない枝などの部分が炭素蓄積として重要な役割を持つことが分かりました。 |
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14:50〜15:20 |
CO2吸収をめざした熱帯での大規模造林が地域社会に与える影響 |
横田 康裕(東北支所 森林資源管理研究グループ 研究員) |
現在,地球温暖化防止策の一つとして炭素吸収造林プロジェクトに高い関心が寄せられています。その評価に際しては,プロジェクトが周辺の地域社会にもたらす様々な社会経済的影響なども考慮することとされています。本報告では,この影響の把握と分析に当たって,どういうことが重要なポイントになるのかをインドネシアでの調査を事例に紹介いたします。地域社会への影響は,事業実施方法,地域の社会経済状況や自然状況などの様々な要因の複合作用の結果として現れるという視点を持つことが重要であることが分かりました。
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15:20〜15:50 |
森林総合研究所の研究と京都議定書 |
天野 正博(森林管理研究領域 領域長) |
我が国は平成14年6月に京都議定書を批准し,地球温暖化対策推進大綱では2010年に森林が1,300万トンの炭素を吸収することを,6%の削減目標の前提としています。気候変動枠組条約締約国会議では,吸収源として森林を活用するに当たって科学性,透明性を高めるためさまざまな要望を研究サイドに依頼しています。森林総研ではこうした要望に対応するため,京都議定書が求める精度で森林の炭素吸収量を推定するための手法開発を進めるとともに,どのような森林管理をすれば目標を達成できるかといったことについて研究を進めています。 |