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サクラに関するQ&A

質問 回答
多摩森林科学園は桜の品種が豊富であり、満開の時期は一様ではないと思いますが、全体的にみて最も良いと思われる時期について教えて下さい。

八重咲きの栽培品種の花が多く見られる時期は例年だと4月中旬です。ただしこの時期にすでに咲き終わって散ったものや、まだ蕾で開花していないものもありますので、目当ての種類が咲く時期を以下のHPで確認してください。

http://www.ffpri-tmk.affrc.go.jp/cherry/bloom/bloom_main.html

園内のサクラの解説板やこのホームページに、オオシマザクラのようなカタカナの書き方と、‘染井吉野’のような漢字をクオーテーション-マークで囲った書き方の2種類があるようです。何か違いがあるのですか? もともと自然界にあった野生のサクラをカタカナで表記しています。例えば、エドヒガン、オオシマザクラ、ヤマザクラなどです。いっぽう、人が育成した栽培品種のサクラを、漢字とクオーテーション-マークで表記しています。例えば、‘染井吉野’、‘八重紅枝垂’、‘河津桜’、‘寒桜’、‘関山’、‘陽光’、‘有明’、‘太白’など非常に多くのものがあります。
桜の開花前線の方が梅より速く北上して、桜と梅が東北地方あたりで一緒に開花すると聞きました。その理由を教えてください。 サクラもウメも基本的な開花にいたる動きは同じで、秋までに形成された花芽は一度休眠し、冬季の低温刺激によって休眠解除されたのち、花芽は成長して開花に至ります。サクラ(‘染井吉野’)は休眠解除中に花芽がほとんど成長しませんが、ウメは休眠解除中でも5℃程度の気温があれば花芽が成長します。そのため、より暖かい地域ではウメは‘染井吉野’と比較すると大幅に早く開花します。いっぽう、休眠解除中にほとんど5℃程度の気温とならない寒冷な地域では、ウメは‘染井吉野’と同じか遅く開花することになります。
桜の開花から満開までの日数が、南では長く北では短い(九州で10日、東北で4日)といわれていますが、その理由はなんでしょうか。 ‘染井吉野’の開花は、冬から春にかけての休眠解除が進むほど開花可能温度が低下して、低い温度で内的成長(つぼみの中の成長)が始まると考えられています。
ちょっと違う言い方をすると、寒い地方の‘染井吉野’は充分休眠解除が進んだ段階で春を迎えますが、暖かい地方の‘染井吉野’は不充分な休眠解除しかしていません。これにより、ひとつの木の中での休眠解除の度合いや内的成長に必要な積算日数にばらつきは、寒い地方より暖かい地方のほうがより変異が高くなります。
この結果、より冬の気温が低い期間が長い東北地方などでは、ひとつの木の中での開花がよく揃うのに対し、暖かい九州地方などでは開花がばらつくということになります。
桜の木の日照条件は開花の時期にどう影響するのでしょうか? きちんと測定した研究データはありません。経験上からの推測ですが、日照条件により開花期に多少の差はあるものと思われます。咲き始めの開花日で2-3日程度の差ですが、満開日ではほとんど差はなくなります。また、実際には光が直接影響するものではなく、直接光があたり温度が高くなることで開花が早まるものと思われます。
桜の花芽は夏に作られるそうですが、夏の気温が高いと花芽が多いなど、夏の状況が桜に変化を及ぼすことはあるのでしょうか?また、降水量なども桜に影響を及ぼすことがあるのでしょうか? スギやヒノキのように開花前年の夏の気温が、花芽の分化に大きく影響する例はいくつかの樹木に見られる現象ですが、その多くは開花・結実量の年間差が大きな種がほとんどです。
サクラの中にも多少はそういった傾向が見られる種も無いわけではありませんが、‘染井吉野’に限ってみると、開花量の年間差は大きくはなく、夏の気温が花芽の分化に大きく影響しているとは思えません。それよりも個体あるいは枝ごとの物質生産量が影響していると考えたほうが良さそうです。
返り咲き(狂い咲き)と二度咲きについて教えてください。 他の植物も同じですが、‘染井吉野’やヤマザクラなどは夏から秋のはじめにかけて冬芽を形成します。秋になると日照時間の短くなったことを感じ取り、葉は冬芽の休眠を促す物質(成長抑制物質・ホルモン)をつくって花芽に送り、翌春まで休眠させます。しかし、8月から9月頃に台風や虫害などで葉が大きな障害を受けた場合などは、その作用が狂い、花芽は休眠できずに10月頃の気温が下がっていく時期に訪れる暖かい陽気に誘われ、開花すると考えられます。また他に、サクラはその昔、南の国で常緑であった時代にもっていた秋咲きの性質が現れてくる一種の先祖返りだとする説があります(二度咲き)。十月桜、四季桜、冬桜などは秋にも花をつけるサクラとして知られています。これらのサクラは春と秋に二度咲くという遺伝的性質を持ったもので、「返り咲き」とは呼びません。しかし、返り咲きと二度咲きの両方の説は明確にはなっていません。
毎年桜の花が咲くのに、今年は花が咲かず、葉がでてきました。どうしてでしょうか? 実物を見ないとなんとも答えようがありません。お近くの樹木医等にご相談ください。
日本樹木医会:http://jumokui.jp/
桜の移植や手入れについて教えてください。 以下の機関で問い合わせや相談に対応しております。
財団法人日本さくらの会:http://www.sakuranokai.or.jp/
財団法人日本花の会:http://www.hananokai.or.jp/b/
日本花の会のホームページからは、「桜の植え方・育て方」のガイドを閲覧できます。
桜の木に毛虫が激しく発生し、薬剤で駆除していますが効果がありません。剪定で駆除したいと思いますが、どうでしょうか? 毛虫の害を避けるためだけの目的であれば、剪定で対処することは望ましくありません。サクラの木は強い剪定には向いていない上に、強い剪定をおこなうと、その後2年程度は花付きに大きな影響があります。他の方法で対処することが望ましいと考えられます。
桜が弱っていますが、原因と対策を教えてください。 特定の木の衰弱や枯損については、現地で個別に診断しなければわからない場合が多く、多摩森林科学園では対応できません。お近くの樹木医等にご相談ください。
日本樹木医会:http://jumokui.jp/
ソメイヨシノに天狗巣病が発生しています。どのように対処したら良いか教えてください。 天狗巣病の場合は、以下のような対処が行われます。
・天狗巣病にかかった部分を切り取る。
・切り取った部分(枝葉)は、焼却または地中に埋める。
・残った切り口には、殺菌剤(「トップジンMペースト」など)を塗る。
桜の木の根にナラタケが生えています。ナラタケ病と断定しても宜しいでしょうか? ならたけ病の診断には、ナラタケの樹木への感染、つまり菌糸が樹体内に入っていることを確認することが必要です。ナラタケのきのこがサクラの根から直接生えている場合、そのサクラはならたけ病だといえます。ナラタケ属のきのこはしばしば地面からも発生するので、きのこの下をよく観察することが必要です。
きのこのない季節には、鉈などでサクラの地際や根の樹皮を剥ぎ、樹皮下にきのこ臭のある白い菌糸膜を確認できれば、ならたけ病と診断できます。この菌糸膜は、ならたけ病に特徴的な「扇状」と称される模様を呈します。もちろん、きのこのある季節にも観察することができます。
川沿いの桜並木で、ほとんどの木の枝が水面に向かってすれすれに下がっています。水面に反射する光を求めて下方に伸びるのか、何か理由があるのでしょうか? 単純に空間があるからです。土手の上の‘染井吉野’ならば、水がない側にも同様に枝が下がっていきます。
桜の中に普賢象(フゲンゾウ)と平野妹背(ヒラノイモセ)という種類があり、この2種は雌しべが2本あると説明されています。昔学校の理科で花には雌しべが1本と教えられ、にわかに納得しがたい気持ちです。 植物によっては「めしべ」は1本ではなく、多数ある場合もあります。ただし、サクラの仲間は基本的には「めしべ」は1本です。‘普賢象’などの「めしべ」が複数本ある現象は、畸形の一種です。サクラ類の正常な花弁数が5枚なのに、‘普賢象’などでは数十枚あることと同様です。
日本で最も多く見られる桜であるソメイヨシノについて、名前や由来について教えてください。 現在並木などに植えられる桜のうち80~90%が‘染井吉野’といわれています。‘染井吉野’の名前や由来については、以下のように考えられています。
・来歴は比較的新しく、江戸時代末期から明治時代初年に、江戸の染井(現在の東京都豊島区駒込と巣鴨の中間当たり)の伊藤伊兵衛という植木屋から、「吉野桜」として売り出されたとされています。現在の上野公園に植えられていたこの桜を、明治18~19年にかけて国立科学博物館の前身である博物局の藤野寄命氏が調査し、奈良県の「吉野桜(山桜)」とは異なる種類であることに気づき、吉野桜と区別するために発祥の地にちなんで「染井吉野」と命名して、明治33年に「日本園芸雑誌」に発表したのがはじめとされています。
・‘染井吉野’は、大正5年にアメリカの学者ウィルソンが、形態的特徴から「オオシマザクラ(大島桜)」と「エドヒガン(江戸彼岸)」の雑種であろうと述べ、昭和20-30年代に国立遺伝学研究所の竹中要博士が両野生種の交配実験などを行い、また最近ではいくつかの研究グループの遺伝子分析により支持されている。
・‘染井吉野’の誕生については、伊豆半島あたりで自然交雑によって生まれたものを染井の植木屋が持ち帰ったという説、また、前述の植木屋伊藤伊兵衛が人工交配によって作り出したという説など、いくつかある。
海岸に河津桜を植えたいのですが。 ‘河津桜’は植栽する環境によって大きさなども変わってきます。また、潮風があたる場所ということでしたら、その影響も小さくありません。河津町の植栽地の例では、内陸部と比較して海岸部は枯損している個体が多いようです。塩害による枯損は覚悟しなければなりません。この点から見ると、海岸に‘河津桜’を植栽することは見直す必要があるでしょう。
海外で友好の印のような形で桜を植えたいのですが、亜熱帯~熱帯で日本の桜の代名詞であるソメイヨシノが現地の気候でも育ち、花を咲かせるでしょうか?もし難しい場合、他の品種で亜熱帯の気候にあいそうなものがないでしょうか? ‘染井吉野’は亜熱帯では冬季の温度が高いことが原因で生育は不可能と考えられます。その理由は冬に休眠するべき期間に、暖かすぎて休眠できず、生育に障害がおこるためです。
中国南部などに生育するカンヒザクラは亜熱帯でも栽培できます。しかし、有効の印として「日本のサクラ」をイメージして栽培するのであれば、カンヒザクラは花の形も色も明確に異なりますので、不適です。
無理に日本のサクラを育てるよりも現地の樹木を育てることをお勧めします。
震災被災地にお送りする目的で、オオシマザクラを育てたいのですが。 オオシマザクラの本来の天然分布地は伊豆諸島・伊豆半島・房総半島に限られます。しかし、現在、茨城県や新潟県、秋田県などの海岸では野生化したオオシマザクラが増加していることが観察されており、東北地方の被災地の環境でオオシマザクラが生育できる可能性は高いと考えられます。ただし、繁殖力の強いオオシマザクラは国内外来植物として、それぞれの地域の在来植物を圧迫したり、本来の自生のサクラ類(ヤマザクラとか)と交雑するなど、生態系に悪影響を及ぼすので、本来の天然分布でない地域への安易な植栽はおすすめできません。
桜の写真を送りますので、種類を教えてください。 多摩森林科学園では原則として鑑定依頼は受けておりません。また、写真だけで判断するのは基本的に困難です。
カスミザクラ、ヤマザクラの雑種のような形態の桜がみられますが、それらを遺伝子レベルで比較したいのですが。 カスミザクラとヤマザクラは、中間的で見分けにくい個体があるようです。日本の野生のサクラ(約10種)が互いに遺伝子で区別できるかどうかは、現在森林総研の研究チームで進めており、26座のマイクロサテライトと呼ばれる遺伝マーカーの結果を総合して、野生種がほぼ区別できるようになっています。それぞれの野生種の個体は一律ではなく種内変異があるため、1座や2座のマーカーで明確に種を識別できるわけではありません。多くの遺伝マーカーを用いることにより、カスミザクラの確率が高い個体、ヤマザクラの確率が高い個体、に判別できるようになります。雑種であるかどうかについても、同様に多くのマーカーを調べる必要があります。
桜の親子関係を証明するDNA鑑定は可能ですか。できる場合、費用、必要なサンプル量、鑑定にかかる期間について教えてください。 親子鑑定は技術的には可能ですが、鑑定業務は行っておりません。費用は、条件にもよりますが数十万円くらいかかるでしょう。必要なサンプル量は、親および子の個体から葉が2-3枚ずつあれば十分です。葉が落ちている時期には小枝(鉛筆サイズ)くらいのものがあれば可能です。送付は4℃のクール便で行い、鑑定には2-3ヶ月は必要です。研究の必要上からの親子鑑定は行う場合がありますが、依頼による鑑定業務は行っておりません。
名木といわれているサクラの木があるが、どのくらい価値があるのでしょうか? 価値に対する判断はこちらではできません。