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一般にサクラは春にだけ咲きますが、それ以外の季節に咲いているサクラもあります。もっともよく知られているのが、’四季桜’や’十月桜’(写真)、’冬桜’といった栽培品種でしょう。これらのサクラは場所や年によっても違いますが、だいたい10月頃に咲き始めます。秋に咲き始めたあと、冬の間も少数ですがだらだらと咲き続け、春にもまた咲きます。個々の花の咲いている期間はそれぞれ1-2週間ほどですが、咲くタイミングが秋から春にわたってばらつくのです。本来春に咲くべき花のつぼみが秋の段階でうまく休眠せずに間違って早めに咲いてしまうからです。
実はこうした現象は多くのサクラに見られます。’染井吉野’も秋に咲く場合があります。本来サクラの花芽は秋には休眠します。この休眠は葉でつくられるアブシジン酸という植物ホルモンによって誘導されます。ところが、台風や病虫害などによって早く葉が落ちてしまうと、うまく休眠することができなくなり、秋に間違って咲いてしまうのです。’十月桜’や’冬桜’はうまく休眠できなくなったことが固定した栽培品種と言えるでしょう。(「春に咲かない桜」に続く)(い)
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