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和名は、武士が身につけた赤い糸でつづられた“緋縅(ひおどし)の鎧”の色に由来する。
幼虫は群生するため、蛹が鈴なりになることもあるが、そんな時には蛹の大半が寄生されている場合も少なくない。羽化直後は活動性が高いが、夏から秋にはあまり姿を見せない。花を訪れる性質は強くなく、クヌギなどの樹液によく集まる。
少年の日、樹幹に止まっていたヒオドシチョウを見つけ、慎重に近づいた。射程距離で一呼吸おき、捕虫網の柄を握り直した瞬間、突然開いた翅の鮮烈な赤色に、思わず手が止まってしまった。目測を誤って空を切った捕虫網をかすめ、彼は林の奥へと滑空して消えていった。
春にはボロボロになった越冬後の成虫が、山頂や尾根などでなわばりを見張る。他の虫を追飛する時には、バリバリという音が聞こえる。多摩森林科学園記録種。(た)
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