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森の科学館の裏の階段や第1樹木園の道などで,薄紫色の1-2cmほどのキノコが見られます(左写真)。これはクモ類に寄生して殺してしまうクモタケという菌です。
地中に棲むトタテグモなどが感染した場合は、クモが死んだ後にキノコが地上に出てきますが、アシダカグモなど地上に棲むクモが感染した場合には、単に薄紫色のカビが死体に生えるだけです(右写真)。キノコの下を注意深く掘れば、キシノウエトタテグモの死体が出てきます。
キノコとカビは、ずいぶん違うような気がしますが、菌類が胞子を作るために、菌糸がまとまって特別な器官をつくったものがキノコで、特別な形にまとまっていない状態がカビと言っていいでしょう。クモタケが地中のクモに寄生して殺した後は、胞子となって次の寄主に取りつく必要があります。キノコを作って胞子を分散させることは、より高いところから胞子を撒くために有利だと考えられます。
森の中でキノコ(菌類)は、「死んだ樹木を分解して土に返す働きをしている分解者」だと教わった人も多いと思いますが、生きた生物を殺す天敵(=消費者)になっている例もあるのです。もっとも、クモは害虫の天敵になっている場合も多いので、害虫にとっては天敵の天敵(2次天敵)であるクモの寄生菌は、ありがたい存在かもしれません。(し)
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