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ニイニイゼミ(7月)

ニイニイゼミここ科学園で本種の初鳴きを聞いたのは2週間も前の6月下旬でしたが,それからずっと天候が優れず,つかの間の晴れ間に痺れを切らしたかのように独り鳴きしている個体がありました。

体長20-24mm程度の比較的小型のセミで,その平べったい体で木の幹にピッタリくっついています。サクラの樹皮にも似た迷彩色をまとい近くでよく見ないとどこにいるのかわかりません。こんな小さな体に似合わず遠くまでよく通る甲高い声で鳴きます。昆虫には珍しくおよそ20秒ごとに周波数が上がったり下がったりします。

かつて芭蕉の有名な句「閑さや 巖にしみ入る 蝉の声」のセミの種類について論争がありました。斉藤茂吉がアブラゼミと主張したのに対し,小宮豊隆はこれをニイニイゼミとしました。根拠はこの句が詠まれたのが7月13日であり,山形県立石寺周辺ではまだアブラゼミは羽化せずニイニイゼミが優勢であること,また「巖にしみ入る」という表現はより声の澄んだニイニイゼミにこそふさわしいことなどでした。そういえば高周波に変調した直後,一瞬音がどこかに吸い込まれたかのようにも聞こえます。さて気になる勝敗はというと,茂吉が折れてニイニイゼミに軍配が上がったとか。(や)

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